経済界の保守分裂騒動 全体に影響<潮流-2021衆院選>㊥


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会見に臨む保守合同の会の下地米蔵大米建設会長(右端)ら=11日、那覇市牧志の同会事務所

 「(自民党)県連の、耳を傾けない姿勢は到底納得できるものではない」

 経済関係者で構成する「保守合同を実現し沖縄の未来を創る会(保守合同の会)」(会長・国場幸一国場組会長)は11日に会見を開き、自民党復党を目指す下地幹郎衆院議員との協議に応じない県連の姿勢を厳しい口調で批判した。下地氏が出馬の意向を示す沖縄1区は、自民公認の国場幸之助衆院議員も出馬を譲らず、保守分裂へのカウントダウンが始まっている。

 14日の衆院解散が間近に迫り、県建設業協会の政治団体「県建設産業政策推進連盟」は、本来なら自民系の立候補予定者に推薦状を出している時期だ。だが、今回は12日時点で1区だけでなく、2~4区でも推薦を出せずにいる。

 保守合同の会には、県内経済をリードする企業が名を連ねる。特に保守系の支持基盤でもある建設業界から、国場組や大米建設など県内大手ゼネコンが参画し、下地氏の復党議論をリードしてきた。

 このため下請け・孫請けの中小企業・零細業者の多くが、従来の自民候補者への協力か、下地氏を支えるゼネコンの顔色うかがいかで板挟みとなり、身動きが取れずにいる。ある建築関係者は「とにかく皆動けない。(ゼネコンに)嫌われるのが怖い」と吐露する。

 県建設業協会の関係者は「(1区以外でも)下地氏支持と自民支持で割れている。1区がまとまらない中で推薦は出しにくい」とため息をつく。沖縄1区の保守分裂騒動は、経済界全体の士気にも影響を与えている。

 自民党は11日に、国場幸之助氏ら県内4選挙区に立候補を予定する4氏への公認を発表した。下地氏が自民候補として出馬する芽がほぼついえたこの日、浦添市の産業振興センター結の街に、1~4区の自民予定候補者の後援会長や50~60社の企業関係者が集まり、気勢を上げた。

 参加した企業関係者は、超短期決戦となる選挙戦に向けて良い雰囲気が作れたとしつつ、「それでもまだ1区には行ききれない」とつぶやいた。

 保守合同の会の開いた11日の会見では、自民党県連が下地氏との面談を拒否したことを受け、下地氏の1区擁立を表明して臨戦態勢を高めると見られた。だが、会見で選挙戦に向けてトーンを上げることはなかった。会見を開くまでの内部協議で、決戦に踏み切るための合意が企業間で得られなかったためだ。

 下地氏復党に向け積極的に動く幹部は「もちろん企業の間の考え方に濃淡はある。私たちは保守がまとまるため、ぎりぎりまで粘るだけだ」と強調し、会としての今後の対応として、保守分裂を覚悟して下地氏に出馬要請することも視野にあるとする。一方で、衆院解散を目前にし、関係者の一人は「分裂したら間違いなくやる気は出ない」と厭戦(えんせん)ムードを漂わせた。
 (’21衆院選取材班)


 19日公示、31日投開票の衆院選に向け、県内政治は早くも決戦ムードに包まれている。衆院解散を前に潮目を読む。