公明「沖縄から議席を」…進む自民とのセット戦術<潮流-2021衆院選>㊦


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公明党が比例九州ブロックで擁立した金城泰邦氏(左)とともに街頭演説に臨む、自民党の島尻安伊子氏=9日午後1時ごろ、名護市宮里

 「この沖縄から悲願の1議席を回復する」。8日に開かれた自民党県連と公明党県本の合同会見。県連が国場幸之助氏=1区、宮崎政久氏=2区、島尻安伊子氏=3区、西銘恒三郎氏=4区=の4氏を党本部に公認申請したと発表する場で、金城勉公明党県本代表はそう強調した。

 公明は次期衆院選比例九州ブロックに前県議の金城泰邦氏を擁立した。国政選挙で公明が沖縄から候補者を擁立するのは故白保台一元衆院議員以来16年ぶり。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて昨年の県議選で擁立人数を4人から2人に減らした経緯もあり、衆院議員誕生による党勢回復・拡大に向け気勢を上げる。

 ただ議席確保は容易ではない。金城泰邦氏の公明内での比例名簿順位が上位になる可能性が低いためだ。公明は九州ブロックで現職2氏を含む6人を擁立する予定で、新人の金城氏は3位以下に掲載される見通しだ。

 一方で過去5回の衆院選で公明が同ブロックで4人の当選枠を確保したのは2014年の1回のみで、他は3人で推移する。当落線上にあるとの危機感から、比例票の上積みを図るため公明側は今回、選挙区は自民、比例は公明とのセット戦術をこれまで以上に強化している。

 自民陣営と共に離島を回るなど“二人三脚”で動く姿もある。自民陣営関係者は遊説など細かな日程も共有していると明かし、「事実上の一体化だ」と相乗効果に期待感を示す。

 「少なくとも逆風はやんだ」。選挙日程が決まった10月上旬、ある自民県連幹部は声を弾ませた。

 新型コロナ対策で強い批判を浴び支持率が低迷していた菅義偉内閣が退陣後、自民党総裁選で県内の立候補予定者2氏が支援した岸田文雄氏が首相に選出され、新内閣で西銘氏が沖縄担当相に就任。来年の県知事選での県政奪還に向け、足掛かりにしたい自民陣営には追い風ムードも漂う。

 だが、経済界を巻き込んだ1区の保守分裂含みの動きの余波は全区に波及し、各陣営に動揺を与えている。加えて、官房長官時代も含め、およそ9年にわたり沖縄政策に深く関わってきた菅氏が退陣し「岸田政権とのパイプが見えるのはこれから」(関係者)という状況で、従来の選挙で展開してきた「政権とのパイプの太さ」を訴える戦略が奏功するかも不透明だ。

 国政選挙の沖縄選挙区で自民苦戦の要因となってきた名護市辺野古の新基地建設問題。自公側は今選挙で新型コロナ対策や沖縄振興計画を訴えの主軸に据え、辺野古の主要争点化を避けたいとの思惑も透ける。

 一方、ある県連関係者は「国政選挙は嫌でも辺野古が問われる。工事も進み、裁判も負け続け、関心が薄れているのは確実だ。ただ有権者の中には辺野古への思いはある。それが投票行動に表れないかどうかは分からない」と話した。
 (’21衆院選取材班)


 19日公示、31日投開票の衆院選に向け、県内政治は早くも決戦ムードに包まれている。衆院解散を前に潮目を読む。