辺野古新基地と与野党 差別解消 沖縄人の手で<佐藤優のウチナー評論>


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佐藤優氏

 岸田文雄政権は、安倍晋三政権、菅義偉政権の対沖縄政策をそのまま継承している。11日の衆議院本会議における代表質問の答弁を見ても、岸田首相が自分の頭で辺野古新基地建設問題について、沖縄との間で解決の緒を見いだそうという姿勢は認められない。

 <立憲民主党の枝野幸男代表は、米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設工事の一時中止と、米側との再交渉を打ち出した。岸田文雄首相は「十分に安定した護岸などの施工が可能だ」などと現行計画を進める考えを示し、辺野古移設が「唯一の解決策」と改めて強調した。枝野氏は「対等で健全であると言いがたい」として日米地位協定の改定を求めたが、岸田氏は消極的で米軍基地政策での違いが浮き彫りとなった。/枝野氏は、辺野古の新基地建設工事について軟弱地盤の存在が明らかになったことで工費が膨張している点を問題視し、岸田氏に改めて工費と工期を明らかにするよう求めた。普天間飛行場の移設合意から20年以上が経過する中で、「アジアの安全保障環境も激変し、米国も世界の軍事態勢を見直している」とし、工事の一時中止と米側との再交渉を政権交代時の政策にする方針を明らかにした。>(12日、本紙電子版)

 他方、枝野氏も沖縄に寄り添っているとは言えない。日本政府が米国と辺野古新基地に関してV字の滑走路の建設を決めたのは、2011年、菅直人政権のときだった。このとき枝野氏は、官房長官だった。辺野古新基地の工法を決定し、建設工事始動の決断をしたことに対する責任感が枝野氏には欠如している。

 さらに枝野氏は「工事の一時停止と米側の再交渉」を主張するが、再交渉に関しての基本方針を明示していない。こんなふらふらした姿勢では仮に野党が政権についても「再交渉はしました。しかし、米国の合意が得られなかったので、辺野古にせざるを得ません」というようなことになりかねない。あるいは、「軟弱地盤の部分の埋め立ては諦めるので、V工法ではなくI工法に変更する。滑走路が1本に減るので、沖縄の負担は軽くなる」というような計画の微調整ということになる可能性もある(このシナリオは岸田政権下でもあり得る)。

 結局、東京の政治エリート(政治家、官僚)に依存していては、在日米軍専用施設の過重負担(日本の陸地面積の0・6%を占めるに過ぎない沖縄に在日米軍専用施設の70%が所在する)という沖縄に対する差別的構造の解消にはつながらない。この構造化された差別の解消は、沖縄人の力によってしかなされない。

 31日に投開票が行われる衆議院議員総選挙では、与野党に関係なく、沖縄の自己決定権を強化するという信念を持つ政治家が選出されることが沖縄の利益になる。日本の政党の区別にとらわれず目に見えない沖縄党に所属する愛国者(愛沖縄者)が国政で活躍してほしい。

(作家、元外務省主任分析官)