【東京】「もったいない」を減らしたい―。那覇市出身の目取真興明(こうめい)さん(30)=東京都国分寺市=は、豆腐の製造過程で廃棄される「おから」を使ったレトルトカレーを開発し、フードロス(食品ロス)解消に一役買っている。「食べることが好きで、食で何かできないかと考えてきた。その中で食品ロス問題に関心を持つようになった」と話す。
小学4年のとき、父親が脳梗塞になり、泊魚市場で働く母親が家計を担った。経済的に厳しい家庭環境だったが、食卓には母が市場から持ち帰った刺し身や賞味期限切れのパンなどがいつもあった。「廃棄されるもので生かされてきた」という。
那覇高卒業後、進学した東京農業大で食料に関わる経済学を学んだ。卒業後、調剤薬局の会社や都内の農業ベンチャー企業を経て20年に退社。年間約300食のレトルトカレーを食べる研究家の経験を生かし、各地のレトルトカレーを通信販売する会社を立ち上げた。日野市の豆腐店「とうふ処(どころ)三河屋」が大量のおからを廃棄せざるを得ないことを知り、レトルトカレーにすることを思いついた。
クラウドファンディングで資金を募り、今年1月から開発を始めた。製造を宮崎県の会社に依頼し、試行錯誤しながら完成させた。
香辛料にひき肉とタマネギのうまみと国産大豆で作られるおからの甘みが交わったキーマカレーの商品名は「BATON CURRY おからキーマ」。生産者と消費者をつなげていきたいとの思いを商品名の「バトン」に込めた。
おからを提供する三河屋では1日に約100キロのおからが出る。多いときで8割を廃棄するという。三代目の吉野大輝さん(29)は「毎日処分しないといけないおからを、新しい方法で活用してくれてありがたい」と話す。
目取真さんは「もったいない」を「本来の価値が発揮されていないもの」と定義する。現在は農家が処分に困っているズッキーニやジャガイモを活用したレトルトカレーの開発・販売の準備を進める。おからキーマは1箱税込み680円。ネットショップ「BASE」などで購入できる。問い合わせは目取真さん(電話)070(2829)9655まで。
(問山栄恵)