「裏」を取り真偽を確認…読者の求める答えに近づきたい <デスクノート>


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 政府が明確な答弁をせず、意図的に資料を出さない。事実そのものすら、ないものとみなす。オスプレイ配備計画、新基地が建設される名護市大浦湾の軟弱地盤、モリカケ問題など思い当たる事例はきりがない。知る権利を軽んじる姿勢は、主権者の国民への背信行為。事実をぼやかし、ねじ曲げて国民の目からそらそうとする行為はまさに「官製フェイク」と言えるだろう。

 2020年4月朝、寝ぼけまなこに飛び込んできたのは、ふわふわと宙に舞う泡のスマホ画像。宜野湾市にある米軍普天間飛行場から流出した泡消火剤の現場写真だ。現場記者が送った。

 02年に北谷町で米軍基地由来の燃料入りドラム缶が大量に地中から見つかり、サンプルが採取されていた場面を思い出した。記者に同じ提案をし、発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)が後に検出された。

 約10カ月後の21年2月、那覇市の自衛隊基地でも同様の流出事故が起き、同じく採取を指示した。自衛隊は当初「PFOSを含まず、毒性はない」と発表した。騒動の張本人による安全宣言に説得力はない。墜落事故でも「予防着陸」「大破」などと日米両政府は言い換えてきた。この泡のサンプルからもPFASが検出された。

 権力に都合のよい情報をたれ流した結末は、沖縄戦を含めた戦争に集約される。健康や命が脅かされているのに、「はい、そうですか」とはならない。発表をうのみにはしないし、できない。

 日々、さまざまな情報が新聞社に集まってくる。真偽を確認して「裏」を取ることは、読者に正しい情報を伝える上で欠かせない基本動作だ。今回の調査報道もその結果に過ぎない。

 科学的な調査のように、新聞社単独で対応できない事例もあり、その際は研究者など第3者に協力を求める。

 虐待事案などが起きた場合でも、社会的な意味合いを識者の見解なども伝え、議論の材料を提案することも新聞社の役割だ。いずれも読者からの信頼と知る権利に応えるためにある。

 2021年の新聞週間の代表標語は「答えなき 時代のヒントを 探る記事」。読者はごまかしを見抜いている。読者が求める答えに一歩でも近づきたい。

 (編成グループ副グループ長)