子どもの夢を応援するには?支援で大切なこと セーフティネットがオンライン勉強会


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 オンライン連続講座「事業がはじまる前と後」(沖縄セーフティネット協議会主催)の第2回は9月24日、子どもの居場所や若者支援の視点から金城隆一氏(特定非営利活動法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆい代表理事)、社会的養護を経験した子ども・若者への経済的な支援などを行う糸数未希氏(NPO法人にじのはしファンド代表理事)を囲んで議論した。

卒業諦めない支援を 糸数未希氏(にじのはしファンド代表理事)

 

NPO法人にじのはしファンド代表理事の糸数未希氏

 「沖縄の社会的養護の子どもたちの進学と資格取得を給付型奨学金で応援する」が当初の活動内容だった。2010年末に児童養護施設から県外の大学に進学した学生が経済的な理由で中退すると聞き、卒業まで応援したいと活動を始めた。

 復帰前に地域の子どもたちを進学させようと豆腐一丁分を節約して集めた「首里奨学母の会」を参考に、毎月一口千円の寄付を呼び掛けた。協力が集まり、この学生以外にも支援を広げた。20年までに約5300万円で82人を支援した。

 沖縄大学や自動車学校が社会的養護の子どもたちの学費を免除し、県事業の奨学金も始まって社会が動いた。県内の児童養護施設出身者の進学率は16年には全国の2倍近くに増えた。

 支援する学生同士や学生と高校生の交流会も開く。元学生から「今度は自分が支援する側に」との年賀状をもらい感動した。

縦割りをつなぎ直す 金城隆一氏(ちゅらゆい代表理事)

 

特定非営利活動法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆい代表理事の金城隆一氏

 2010年にちゅらゆいをつくり、障害福祉の制度を使って経済的に厳しい人が利用料を払わなくても利用できるサービスを作った。18歳以下の子どもが通えるよう那覇市に提言して、全国でも珍しい公設民営の子どもの居場所として誕生したのが「kukulu」だ。食事や体験の提供を重視した。当時の貧困対策は子どもに生活訓練をするところもあり、それとは異なる流れで今につながった。

 市民参加型の運営、親の支援、高校中退予防や進路決定、小学生の居場所、企業との連携など、見えてきた課題に対応する事業をデザインしてきた。

 貧困など、特定の「かわいそうな子ども」ではなく、子どもの権利の視点ですべての子どもを応援する土壌を作りたい。行政、民間にもある縦割りをつなぎ直し、具体的にどんな事業が必要か、民間、市民、議員とも細かい議論をしたい。

<質疑応答>

雇用もキーワードに 糸数氏
教育の多様性が必要 金城氏

音楽発表会で販売するクッキーを試作する利用者と職員=2020年2月、那覇市の那覇kukulu

 参加者 体験と自尊感情について詳しく聞きたい。

 糸数氏 とても優秀で海外の大学院に決まった学生がいる。目標を持って積極的に学ぶが本人は「自尊心がない」と言う。こんなに優秀なのにと思うが、あえてそれを改善させようと思わず、関係性を大切に、本人がやりたいことを応援できればいいと思っている。

 金城氏 経済的な理由で他の人にできることができないと、もともとあった自尊心が損なわれていく。環境のせいだが子どもは自分のせいだと思い込む。人との体験で失われたものは人との体験でしか埋まらない。体験や人とのつながりの中で、失われたものを自分なりに再構築していく。それが居場所の役割だ。

 参加者 困難な状況にある子を生み出さないために何が必要か。

 金城氏 不登校は教育の多様性のなさが問題だ。公教育が合わないなら早く民間と連携してほしい。早くつながれば何とかなる子がいる。一度脱線した人は低賃金の雇用になりやすく戻れる仕組みがない。企業と連携して雇用を考えたい。

 糸数氏 1人の人間として大切にされないことが連鎖している。子どもの権利と沖縄の雇用状況の二つがキーワードだと思う。