自衛隊配備、リスクの説明を 星野英一琉大名誉教授(国際関係学)<識者の見方・衆院選2021>2


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―基地問題や安全保障政策で県選出議員の役割は。

 「国会議員は国民の代表だが、選挙区代表であることも期待される。自治体首長のように地域の利益、地域住民の生活や安全について選挙区から中央政府への意思伝達回路としても機能してほしいということだ」

 「沖縄には米軍基地から派生する事件事故や環境などの基地問題と、コロナ禍に苦しむ観光産業や全国下位のさまざまな指標にみられる経済問題とがある。片方の解決のために片方を犠牲にしてはならない。安保政策では住民の安全や人権に抵触しない形で国民の利益が図れるかを判断し、県民・国民が納得できる議論を示せる人が望ましい」

―辺野古新基地建設について争点化を回避する動きもある。

 「県民投票などで『新基地建設反対』の民意は明確だ。基地建設を容認するのであれば、建設の必要性について、県民を納得させる議論が必要だ」

 「政府は基地政策と沖縄振興を一体とする『リンク論』を強めているが、その是非も今回の選挙で問われる。争点化回避の選挙戦術は、沖縄振興の説明に注力し、『迷惑料』の議論に知らんぷりをする。それでは、県民の自尊心を傷つけるだけだ」

―中国への対抗で南西諸島では自衛隊配備も強化されている。

 「沖縄戦で捨て石にされた歴史があり『日本の安全のために沖縄を犠牲にすべき』と主張する候補者はいないだろう。自衛隊は地方の人口増・税収に資するかもしれないが、戦争が起きれば攻撃対象にもなる」

 「自衛隊配備を進めるならば、住民の危険回避や避難方法の確認、対立が武力衝突にならぬようにする周辺国との信頼醸成措置を政府に求める必要がある。配備がもたらす危険性と利益を候補者がどう説明するか注目したい」

―有権者は何を意識して投票すべきか。

 「自分にとって沖縄の望ましい姿をイメージし、それに少しでも近づけるために、現在の自公政権の政策を主張する代表を選ぶのと、反対の声を上げる野党議員を国会に送るのとどちらが良いか。自分の考えと100%同じ候補者を探すのではなく、自分の選挙区の候補者の中で誰に投票することが、自分の望む沖縄に少しでも近づくことになるのかを意識してほしい」

 (’21衆院選取材班)