沖縄振興、構造的な課題の議論を 宮城和宏沖縄国際大教授(経済学)<識者の見方・衆院選2021>3


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宮城 和宏氏

 ―来年で復帰50年の節目を迎える。沖縄振興の論点は。

 「内閣府の『新たな沖縄振興策の検討の基本方向』では、復帰から50年間続く『沖縄振興体制』の基本的な構造は温存され、マイナーチェンジをする方向性が示された。政治的に影響を受けやすい構造的課題は温存された。内閣府沖縄担当部局は政治の意向を受けて官邸がリーダーシップを発揮する仕組みになっており、政治が介入しやすい。組織・制度上の課題を残したまま、新たな沖縄振興計画に移ることになる」

 「他都道府県は各省庁への予算折衝により、おおむね『官僚の論理』が優先されるが、沖縄は内閣府による(内閣府が県の代わりに他省庁と予算折衝をする)一括計上方式を取っているため、『官邸の意向』を受けやすい仕組みになっている」

 「法律上の問題点もある。沖縄振興特別措置法(沖振法)にも、沖縄関係の補助金の補助要綱にも、予算の決め方が細かく書いていない。『予算の範囲内でその全部または一部を補助する』としか書いておらず、どういった仕組みで決めるのかルールがない。こちらも政治介入がしやすい仕組みだ。その点は他の都道府県と根本的に違う。米軍基地との関係で予算を動かせるわけだ」

 ―そういった課題に関する議論は進んでいるか。

 「復帰から50年続く沖縄振興体制を今後どうするか、論点としてそこまで浮上していない。候補者の議論は『一括計上方式の在り方を考えるべきだ』程度にとどまっている。仮に一括計上方式をやめて各省庁と直接予算折衝をするようになっても、ほとんどは公共工事関係の予算折衝にとどまることになるだろう。少しは行政能力のアップにつながるかもしれないが、基本的に大きな変化はない」

 「沖縄にとって肝心なソフト事業は内閣府の所管だ。下手をするとソフト事業の予算折衝はさらに難しくなるかもしれない。一括計上方式をやめると同時に今の制度自体もやめるなど包括的な議論が必要だ」

 「県は沖縄振興は今後どうあるべきかなどの報告書は多く出すが、既存の枠そのままの議論にとどまっている。50年間の課題をきちんと総括しているのか疑問だ。仕組みを変えるには政治家がリーダーシップを発揮する必要がある。沖縄振興の在り方に関する議論がさらに盛り上がってほしい」
 (’21衆院選取材班)