<衆院選3区・紙上討論>辺野古移設や世界遺産登録 屋良氏と島尻氏の考えは?


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名護市辺野古

 琉球新報社が実施した衆院選沖縄3区の立候補者紙上討論で、立民前職の屋良朝博氏(59)と自民新人の島尻安伊子氏(56)は、新型コロナウイルス対策や憲法改正に対する考え方などについて主張を戦わせた。沖縄振興計画の在り方を巡っては、予算の一括計上からの転換を図る考えや、北部と中南部の格差是正の推進という主張をそれぞれぶつけ合った。 (文中敬称略、’21衆院選取材班)


<辺野古移設>

米軍再編で新基地不要 屋良氏
現行計画が返還の近道 島尻氏

 ―米軍普天間飛行場の返還・移設問題の解決策と、在沖米軍基地の在り方をどう考えるか。

 屋良 SACO最終報告では普天間飛行場や那覇軍港など返還合意したものの、県内移設条件付きのため、長年塩漬けにされている。だが、その後の米軍再編で海兵隊の主要戦闘部隊はグアム、豪州、ハワイなどへの分散配置が決まり、兵力そのものの移動も基地負担の選択肢に加えられ、沖縄県内だけの移設・統合ではなくなった。

 空中給油機KC130は山口県岩国基地に移駐済み、米本国から派遣される来援機収容についても福岡や宮崎の航空自衛隊基地への移転が決まっている。県外・国外移転後に残るのは、司令部と海兵遠征隊と呼ばれる小ぶりな部隊で、しかもその遠征隊は1年の半分以上、アジア太平洋を巡回している。普天間は即時運用停止、辺野古は不要となる。

 島尻 普天間飛行場の返還については、日米両政府の合意に基づき、辺野古への移設に取り組むことが一番早いと考える。新たな日米合意には交渉だけで時間もかかり、そもそもまとまるかも分からない。現行計画を着実に進めるのが普天間飛行場返還の近道ではないか。

 自分の国は自分で守る。将来的に在沖米軍の段階的縮小を目指し、自衛隊を充実強化するのが望ましい。

 


<憲法改正>

理念の具現化を先に 屋良氏
国民の広い理解得る 島尻氏

 ―憲法改正への立場と今後の改憲議論の在り方について考え方を伺う。

 屋良 憲法が掲げた理想の実現には、まだほど遠い状況にある今、なすべきはその理念の具現化であり、現行憲法を変えることではない。特に沖縄県民は平和的生存権を脅かされ続けており、改憲論議を進めるより、まずはその権利獲得のための環境整備が求められる。

 島尻 「現行憲法の自主的改正」は結党以来の党是で、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三つの基本原理は今後とも堅持し、国民の幅広い理解を得て、憲法改正に取り組みたい。国民の幅広い理解を得るため、党内外、全国各地での取り組みを積極的に行う。

 


<世界遺産登録>

騒音から動植物守る 屋良氏
持続可能な観光実現 島尻氏

 ―世界自然遺産登録に関連して必要な取り組み・施策は何か。

 屋良 世界自然遺産登録地である沖縄本島北部・やんばる地域は多様で希少な動植物の生息地である。隣接する米軍北部訓練場の騒音等の被害から、これら動植物の生育環境を守り世界自然遺産の名に恥じることのない環境を守りぬく。後世にその自然を伝えるべく必要であれば入域制限などオーバーツーリズムを招かぬよう一定の制限を課しつつ自然環境の維持・保全と観光振興の両立を図る。

 島尻 素晴らしい自然環境が将来にわたり保全され、地域の持続的発展の基盤となることを期待している。そのためマングース等の侵略的外来種対策、希少な昆虫類や爬虫(はちゅう)類等の密猟対策、ヤンバルクイナ等の交通事故対策を一層進めなければならない。観光客が特定の時期や場所に集中し自然の価値を損なうことのないよう、持続可能なツーリズムを実現する必要があると考える。

 


<訴えたいこと>

新基地即時中止

 屋良 コロナ禍で疲弊した県民の命と暮らしを守るため、医療提供体制の整備・拡充。沖縄の割高な物流(送料)コストの低減や、鉄軌道導入など公共交通システム整備による移動コストの負担軽減。県民の圧倒的多数によって示された辺野古新基地建設、即時中止等。

均衡ある発展を

 島尻 新型コロナ対策と、コロナ禍で傷んだ沖縄経済の立て直し。そして本土復帰50年を迎える沖縄が「県土の均衡ある発展」を実現するため次期沖縄振興法を訴えたい。「北部と中南部の格差是正」「子どもの貧困対策」「すべての女性が輝く社会の実現」等を実現したい。