食べられない子、居場所ない子…活動通して貧困解消へ セーフティネットがオンライン勉強会


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 オンライン連続講座「事業がはじまる前と後」(沖縄セーフティネット協議会主催)の第3回は9月28日、沖縄で初めて子ども食堂を開所した鈴木友一郎氏(ももやま子ども食堂副代表理事)、子ども関係団体などを支援し、団体と研究者をつなぐ基金を運営する小阪亘氏(公益財団法人みらいファンド沖縄代表理事)を囲んで議論した。質疑応答には、子どもの貧困対策研究者の糸数温子さんも参加した。

子ども支える施策弱い/鈴木友一郎氏(ももやま子ども食堂副代表理事)

ももやま子ども食堂の鈴木友一郎代表副理事(鈴木氏提供)

 自分の子育てを通し、食事に事欠く子のいることを肌身で感じていた。以前より沖縄は子どもを取り巻く状況が悪かった。東京都豊島区で、保護者が夜働き留守にするため、その間子どもを受け入れる児童館を見た。その時、沖縄にも必要だと思い、沖縄市で子ども食堂を始めた。

 子ども食堂でいろいろなことが解決できるかについては懐疑的だったが、やる意味はあると感じている。一方で、子どもを支える既存の施策が弱いのが現状だと思う。前進している部分は否定しないが、弱い部分を問う機会は少ない。中高生の居場所の少なさは、知られるようになってきているのではないか。

 子ども食堂ができた背景は、人と人が分断されているとみんなが感じていたからだと思う。地域のセーフティーネットが壊れてしまっている中で、子ども食堂は人と人をつなぐ、そういう所に関心が集まったと感じている。沖縄の中には子どもを支えたいという“DNA”が残っているのではないか。

人つなげる仕組み作り/小阪亘氏(みらいファンド沖縄代表理事)

公益財団法人みらいファンド沖縄の小阪亘代表理事

 みらいファンド沖縄は、子どもの当事者を直接支援するのではなく、引いた所から、支援する団体を支える財団だ。市民の皆さんから寄付を頂いて設立した財団で、主な活動は寄付金を集め、社会課題に取り組む人に助成する。地域円卓会議と題して課題を共有する会も実施する。休眠預金の活用事業もやっている。

 事業の特徴として、NPOと研究者が共同で応募するという仕組みを採用している。お金を出したら終わりではなく、助成報告会などを通して、人をつなげ、事業を支えていく仕組みを作っている。

 基金設置で、課題設定のため運営委員会で議論した。さまざまな問題の中から、子どもの貧困にフォーカスした。当時から貧困の連鎖をいかに断ち切るかという問題が出ていた。一方で、子どもの貧困は課題ではなく現象だと考える。複数の課題が重なり、貧困な状態に置かれている。直接支援も大事だが、環境を改善する取り組みが必要だ。


<質疑応答>

学校からは好意的反応 鈴木氏
当事者とつながり模索 糸数氏

畑仕事を体験する、ももやま子ども食堂の子どもたち(鈴木友一郎氏提供)

 参加者 子ども食堂を始めた当初、地域からどのような認識を持たれたか。

 鈴木氏 地域の学校からも好意的に受け止められていたと思う。一方で、ある自治会の方から「今時食べれない子がいるのか」と聞かれた。その人は、昔は食べれないときは隣の家で、隣がいなければ、その隣で食べたと言っていた。まさに今は、それができていないと話したことを覚えている。

 参加者 子ども自身が子ども食堂に行くことに対して、居場所はどう受け止められているか。

 鈴木氏 親に「そういう所に行くな」と言われたという話も聞いたこともある。難しい点がある。ただ、地域に理解ある人も多い。

 平良斗星氏(司会) 糸数温子さんはみらいファンド沖縄の助成を受けて事業をやっていたと思う。このような基金は必要か。

 糸数氏 調査研究で助成してもらった。支援団体が、困りごとを抱えている人と、どのようにつながれていないのかを聞き取る調査だった。当時、「沖縄、貧困」というキーワードをインターネットで検索すると、ヒット件数が少なかった。支援団体を探す人にアプローチできていないという問題意識があった。

 平良氏 研究助成は研究者と団体をつなげる役割を担ったと感じる。