米軍の飛行訓練の拡大に懸念 粟国の緊急着陸、直前に空中給油も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリが20日、粟国村の粟国空港に緊急着陸した。村内では過去25年間、米軍機の事件・事故はなかったとみられ、民間空港への緊急着陸という異例の事態となった。粟国村は、常設の米軍訓練空域・水域から離れているが、周辺に空中給油の訓練ルートが設定されている。在沖米海兵隊は本紙の取材に、緊急着陸前にヘリが空中給油中だったと明らかにしている。

 地図に記載されない臨時訓練空域の設定もあり、既存訓練空域外での米軍機訓練が拡大している現状が改めて浮き彫りになった。米軍機飛来の常態化への懸念が上がり、粟国村などは月内にも沖縄防衛局に抗議する方針だ。

 20日夕の緊急着陸の前後、米軍岩国基地(山口県)所属のKC130J空中給油機1機が嘉手納基地から飛び立ち、粟国島周辺を飛行していた様子が航空機位置情報を公開しているサイトで記録されている。

 粟国島北西にある米軍の空中給油訓練ルート周辺を往復しており、緊急着陸したヘリと給油訓練を実施していたとみられる。

 緊急着陸前後の時間帯に、空中給油機は約1時間にわたって粟国島周辺を周回飛行した後、岩国基地に戻った。リムピースの頼和太郎編集長は「粟国島周辺で空中給油訓練し、緊急着陸の前後は島周辺を飛行して着陸したヘリと基地の無線通信を中継したのだろう」と分析する。

 今回の緊急着陸の原因について、在沖米海兵隊の担当者は本紙取材に「空中給油とは関係ない個別の問題だ」と関連を否定した。

 一方、2016年12月に起きた名護市安部のMV22オスプレイ墜落事故は、夜間の空中給油中にオスプレイの回転翼部分と空中給油機の給油ホースが接触したことが原因だった。

 粟国空港ではヘリが緊急着陸した21日夕から空港を離れた22日午前にかけて民間機運航はなく、滑走路など施設にも被害が確認されなかった。

 粟国村議会は25日に臨時会を開き、抗議決議を可決。高良修一村長らによると村内で少なくとも過去25年間、米軍関係の事件・事故の発生はないという。

 高良村長は「米軍の事件・事故は対岸の火事だと思っていたが、沖縄のどこでも起きうると認識した。島で当たり前のように事故が起きないか心配だ」と懸念した。
 (塚崎昇平、比嘉璃子)