首里城の瓦、学校の花壇に 「文化感じ取って」小禄高事務長の上地さん


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首里城復興を願い、生徒たちと一緒に首里城の瓦片などで学校の花壇整備を進める県立小禄高校事務長の上地大作さん=21日、那覇市の県立小禄高校

 那覇市の小禄高校の事務長上地大作さん(57)は、2019年10月の火災で崩れた首里城の瓦や石材を使って、校内の花壇増設や環境整備に取り組んでいる。上地さんは幼少期の思い出の地でもある首里城に、火災前日にも偶然立ち寄っていて、黒煙立ち上る変わり果てた姿に心を痛めた。学校には首里城に行ったことがない学生もいるが「首里城の一片から琉球の文化と歴史を感じ取ってほしい」という上地さんの思いに呼応するように、生徒たちが集まって一緒に花壇を造っている。

 上地さんは那覇市安里出身。幼少期は、琉球国王の位牌(いはい)を安置していた崇元寺周辺でよく遊び、首里に住んでいた身内を訪ねて何度も龍潭や首里城に足を運んだ。大人になっても年間パスポートを使って首里城を見学した。2年前の火災前日も何となく立ち寄り、幼少期の思い出や、かつての琉球王国の歴史文化に思いを馳(は)せたが、翌朝、テレビで炎に包まれ崩れ落ちる首里城を見て愕然(がくぜん)とした。

 当時は浦添高校に勤めていた。屋上から変わり果てた首里城が見えた。「目の前の光景を受け入れられなかった。当たり前にあった首里城が、もう記憶の中にしかない」。火災から2年たった今も、思い返すとうなだれてしまう。

 「ただ欠片(かけら)が残っている。実物を触ることで、子どもたちの心の中に、琉球の歴史や文化、それをつくってきた人たちの何かが残るかもしれない」。そう思い、小禄高校に赴任後の今年6月、県の「首里城火災破損瓦等の活用事業」に申請し、焼け落ちた首里城の瓦や石材を学校に運んだ。生徒たちに、瓦片にメッセージを書いてもらい花壇の装飾に使った。美術の時間にはシーサー作りに使い、石畳に使われていた石材は新しい花壇の外壁となった。手伝いに来る生徒たちはどんどん増えた。

 3年の宇根港さん(18)は「作業をして、首里城が1日でも早く再建してほしいと感じた」と話した。1年の友寄優香さん(16)は、近日開催の放送コンテストで上地さんの取り組みを取り上げる。

 上地さんは「今では校内の至る所に、生徒たちのメッセージが入った瓦片がある。首里城復興を思う人たちの励みにもなるはずだ」と笑顔を見せた。 

(嘉数陽)