離婚直後にコロナ直面…沖縄のシングルマザーが1票に託す思い


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コロナ禍での暮らしを語る女性=本島内

 新型コロナウイルスが昨年以来猛威を振るい続ける中、県内の困窮世帯を取り巻く生活環境は一層厳しさを増している。沖縄本島で暮らす40代女性は2020年、長年言葉の暴力が絶えなかった夫と離婚した。子ども3人と共に新たな生活を営み始めた直後に、コロナ禍に直面。引っ越しや転職、団体の支援を得て生活をつなぐが、不安定な状態が続く。そんな中で迎える31日投開票の衆院選。沖縄の経済環境が厳しいからこそ、子育て支援の拡充を望む。「いろんな候補者がいろんなことを言う。しっかり実現してほしい」と訴える。

 女性は20年ほど前に結婚し、離島で暮らしていた。結婚当初から夫の言葉の暴力を受け、子育てを優先して耐えてきたが、次第に心をむしばまれ、女性は精神科に通うようになった。

 「もう耐えられない」と限界を感じ、離婚を念頭に19年ごろから島内の宿泊施設で清掃員として働き始めた。20年に離婚が成立。新たな人生を歩み始めた親子を、コロナ禍が襲った。

 宿泊客が減った影響で勤務時間が減り、毎月8万円程度あった清掃員としての収入は半減した。家族を頼って、本島に移り住んだ。

 それから1年余り。精神面では平穏を取り戻したが、経済環境の厳しさは変わらない。ハローワーク通いを重ねて今年、パートタイムの仕事に就いた。

 正職員に登用されなければ、最長5年で契約が終わるのも不安材料だ。小学生の子どももいる中「年齢的に今後新たに仕事を探すとなると厳しい。なんとか今の所で働きながら、ダブルワークも考えないと」とため息をついた。一人親家庭などへの弁当支援を受けながら暮らす。

 親として、悔やんでいることがある。今年高校を卒業した息子から昨年末、「大学へ行きたい」と言われたが、経済的理由でかなえてあげられなかった。

 下の娘もおり「将来を考えると(高等教育を)身に付けてほしい」と思うが、高い学費がハードルなのは変わらない。「無料化など、もう少し大学に通わせやすい環境をつくってほしい」。現状を変えるきっかけを、政治に託す。
 (’21衆院選取材班)