安心して生演奏を聴ける環境へ ICT活用し公演やレッスン 琉球フィルハーモニック<続・舞台の灯をつなぐ>4


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 約4カ月にわたる緊急事態宣言で、多くの文化芸術分野の公演が中止や延期に追い込まれた。昨冬と同様に、新型コロナウイルス感染症の増加、第6波も懸念される。緊急事態宣言発令の影響で琉球フィルハーモニックが今年1年間に予定していた6本の公演は、来年度に延期が決まった。代表理事の上原正弘さんは「コロナ禍とはいえ、これ以上の中止や延期は厳しい。安心して生演奏を聴ける環境を作り、クラシックを聴く素晴らしさを伝えたい」と力を込める。

那覇ジュニアオーケストラ団長の上原正弘さん(上段左から3人目)、上原玲子さん(同4人目)の下でオンラインレッスンで楽器を奏でる子どもたち(琉球フィルハーモニック提供)

 琉球フィルハーモニックは2009年に活動を開始した。現在は県内外で活動する演奏家ら約50人と契約などを行い、コンサートごとに出演料を支払う。クラシック演奏家は出演料のほかレッスンの指導で生計を立てるなど専業従事者の割合が多い。事務局長の上原玲子さんは「いつ緊急事態宣言が解けるか予測ができない中でも、自宅にいながら音楽を楽しむ方法を模索していた」と振り返る。

 琉球フィルハーモニックが運営する「那覇ジュニアオーケストラ」は、昨年5月からオンライン会議システム「ズーム」を利用して子どもたちにオンラインレッスンを続けた。企業の協力の下、ICT(情報通信技術)を取り入れたコンサートやワークショップの実施は、コロナ禍でも音楽や体験を届けられる手段として新たな変化をもたらした。

 ハンディキャップのある人を対象にした「美らサウンズコンサート」でもICTを活用し、独自の感染症予防ガイドラインなど対策を講じてコロナ禍でも開催できた。一方で双方向のコミュニケーションに際しては、通信環境による配信の音のずれなど課題もある。

 社会にクラシック音楽が必要だと認識してもらうことを理念に、事業を展開している。上原代表は「窮地に追い込まれても歌や踊り、芝居などが人々を励ましてきたように、文化芸術は心に根付いているもの。大変な時こそ工夫を凝らして、アフターコロナのコンサートの開き方を模索し続けたい」と話した。
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