別姓も選べたらすぐに結婚できるのに…改姓を望まない2人の判断と政治に求めること


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「同姓でも別姓でも結婚できるような、選択肢が欲しい」と語る比嘉りよさん=28日、宜野湾市

 幼い頃からフルネームで呼ばれることが多かった。沖縄ではメジャーな姓と、それに合った響きの名。自らの名前に愛着を持つ中城村の比嘉りよさん(29)は、交際約4年のパートナーとの結婚を望むが、どちらも改姓を希望しないため、婚姻届を出せていない。別姓も選べれば、すぐに結婚できるのに―。選択的夫婦別姓制度の導入が見通せない現状を、もどかしく思う。 (’21衆院選取材班)

 会社の同僚との交際が2年を過ぎた2020年3月、妹が結婚し、改姓した。「改姓後の手続きが多い」とこぼす妹の姿に、漠然と「大変そうだな」と感じた。それから間もなく退職し、パートナーと一緒に暮らすように。生活は順調で、結婚話も具体化した。この先も2人で日々を積み重ねていきたいと思う半面、改姓を考えると気が重くなった。

 選択的夫婦別姓に関するニュースやコラムを、インターネットなどで読みあさった。心に残った記事はパートナーにも転送した。調べていくうち、制度導入を求めて活動する県内の市民団体「選択的夫婦別姓・陳情アクション沖縄」の存在をSNSで知る。今年4月、同会が主催する当事者の集い「うみなーくcafe」に初めて足を運んだ。

 「結婚のために改姓したがつらい。ペーパー離婚も考えている」「夫に改姓してもらい、罪悪感がある」。当事者が悩みを語り合っていた。ネット上で別姓希望者が批判されるのをよく見掛けていたので、思い思いに語る様子に「ここは守られている場所だと、心理的に楽になった」

 「沖縄でも起きている問題なんだ」と認識し、メンバーに加わり、制度を巡る動きに注目している。夫婦別姓を認めない民法などの規定が、憲法に反するかどうかが問われた裁判で、最高裁は今年6月、合憲との判断を示しつつ「国会で論ぜられ、判断されるべき」とした。衆院選でも各党の論戦を見つめる。

 パートナーとも相談し、事実婚をするつもりだ。ただ、法律婚と違い、相続などの悩みは尽きない。「本人たちが望めば、何も障害なく結婚できるような日が、一日でも早く来てほしい」と願う。

 陳情アクション沖縄の共同代表を務める砂川智江さん(44)=沖縄市=は、事実婚や子連れでの再婚など、多様な結婚・家族が存在しているのに、法整備が追い付いていないと指摘する。「長年議論されている問題。同姓、別姓どちらも選べるよう、選択肢を速やかに用意するのが政治の責任だ」と訴えた。


<用語>選択的夫婦別姓制度

 従来の夫婦同姓に加え、当事者が望む場合、結婚後もそれぞれが結婚前の姓のままでいることを認める制度。現行制度では、夫婦は同じ姓を名乗らなければいけない。厚生労働省の統計によると、2019年は95.5%の夫婦で妻が夫の姓に変えている。