「いっぱい恥かけよ」ぶっきらぼうなエール胸に 岩切美穂(北部報道グループ)


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written by 岩切美穂(北部報道グループ)

 「いっぱい恥かけよ」。取材現場で、折りにふれて思い出す言葉がある。奄美で記者をしていた頃、警察・検察や裁判所の取材を担当することになった私に、大先輩が笑いながら掛けたひと言だ。一瞬、頭が「?」状態になったが、真意を知って納得した。

 「記者は多くの場合、取材する分野の素人だ。まして司法なんて、初めから分かる人はいない。分からなくて当たり前。恥かいて当たり前。知ったかぶりしても相手は見抜く。分からないことは素直に『分かりません』と質問し、その分、勉強しなさい」

 法律などかじったこともなかった私に対して、自身の経験を踏まえたぶっきらぼうながら温かいエールだった。「そうか、恥をかくことを恐れなくていいんだ。知ったかぶりする方がずっと恥ずかしい」。そう思えた。未知の世界を取材する心理的ハードルが少し下がって、楽になった。

取材のために何度もめくった刑法などの解説本

 「勉強不足ですみません。どういう意味ですか」。警察や検事に質問しては刑法や刑事訴訟法の解説本をめくり、めくっては質問する日々は、ひ弱な心を鍛えた。なめられまいと肩肘張っていたせいで気の強さも鍛えられた。こちらは喜ばしくない副産物だ。

 今も現場で分からないことがあると「勉強不足ですみません」を繰り返している。元来怠け者なので、「調べ尽くした」と思えたことはまだない。開き直らず、謙虚に取材に当たりたい。

(金武町、宜野座村、恩納村、伊江村担当)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。