長い休業、時短からの再開に人手不足、営業制限の事態も…沖縄・飲食店の実情


社会
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来店した観光客にビールを提供する従業員(左)=1日午後9時、那覇市牧志の花琉球てんぶす那覇店

 新型コロナウイルス感染防止に関する県の独自措置が10月末で終了し、4月以降続いていた飲食店などの時間短縮や休業の規制は1日から全面解除を迎えた。飲食店などでは経済活動の再開を喜ぶ声がある一方で、人手不足により営業を制限せざるを得ない状況もあるほか、食材の価格高騰でメニューの値上げに踏み切るなど、今後の動向を不安視する業者もある。

 那覇市久茂地の居酒屋「えん沖縄」は1日、約5カ月ぶりに営業を再開した。又吉真由美社長は「常連客を中心にあっという間に予約で埋まった。年末年始に向け忙しくなる。うれしい悲鳴だ」と歓迎した。

 県内で居酒屋12店舗を展開する「ちぬまんグループ」は、5店舗のみ通常営業を再開した。与那和正専務は「本当は全店舗で再開できれば良いが、長引くコロナ禍で観光客が減り、人々の生活スタイルも激変した。どれだけ顧客が戻ってくるか不透明な部分も多い」と話す。

 休業中は従業員を守ろうと雇用調整金を利用して雇用を継続してきたが、いざ再開という時に、仕事を掛け持ちしていた一部の従業員が辞めたり、必要な時間のシフトに入れなかったりする事態も起きている。

 与那専務は「人手不足は深刻で、早急な対策が必要だと感じている。再開はうれしいが一筋縄にはいかない」と複雑な心境を吐露した。

 県内で焼肉店を展開する飲食チェーンも、従業員の確保に悩まされている。担当者によると、10月に緊急事態宣言が解除され、9月までとは桁違いの来店客が訪れているという。また、同社では輸入牛などの価格高騰に伴い、1日から食べ放題コースの値上げにも踏み切った。

 担当者は「人手不足に価格改定と課題は多いが、顧客に喜んでもらうためにどうにか頑張りたい」と前を見据えた。

 求人おきなわの藤垣公太営業部長によると、同社が発刊する求人誌「アグレ」に掲載された9月の1週間当たりの平均求人件数は507件だったのに対し、10月は604件。最新の10月30日号では614件だった。

 藤垣部長は「例年11~12月にかけて求人件数は減少するが、今年は傾向が違う」と指摘。県独自措置の解除を見据え、10月から飲食店を中心に求人件数が増えているといい、「11月以降も傾向は続くだろう。募集者と人材がうまくマッチできるようにお手伝いしたい」と述べた。