ポスト沖縄振興の時代に 地域発展の基軸に「環境」 真喜屋美樹・沖縄持続的発展研究所長<衆院選2021結果を読む>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
真喜屋美樹・沖縄持続的発展研究所長

 今回の選挙結果からは、沖縄振興体制の存続を危惧した有権者が少なくなかったことが推察できる。しかし、復帰50年を前に、ポスト沖縄振興体制に向き合う時期に来ていることを正視する必要があるだろう。

 1972年に沖縄振興開発計画として始まった、沖縄振興のための特別措置は50年が経過する。大阪市立大学の宮本憲一名誉教授は「第2次計画までにインフラ整備がほぼ他府県と同等になった」とし、第3次以降の振興策は「沖縄経済を極度の財政依存体質に陥らせた」と指摘する。

 同計画が復帰後の社会基盤整備に一定の役割を果たしてきたことは確かだが、高率補助による開発を優先した弊害も指摘される。復帰から50年が経過しようとしている今、ポスト沖縄振興体制として他府県と同様の仕組みでの発展を考えることは不可欠ではないか。

 他方、沖縄振興計画の弱点の一つは県土計画だった。開発効果が期待できる中南部に広がる米軍基地の存在が、県土の均衡ある発展の姿を描くことを困難にしてきたからだ。ポスト沖縄振興体制では、持続可能に発展する沖縄をつくる鍵となる跡地利用が重要な位置を占めると考えられる。

 岸田首相は、今回の選挙で「新しい資本主義」や「成長と分配」を掲げたが、同時に「経済成長を実現して分配政策に取り組む」と主張した。「成長」が優先される経済政策は、トリクルダウンにより大企業や富裕層が潤えば、その効果が自動的に周辺に波及していくという従来の新自由主義との差異は不明瞭だ。国際社会では、90年代に行き詰まりが指摘された経済発展モデルだ。

 従来の大規模な基地跡地で行われた跡地利用は、商業開発型の「成長」を優先したものだった。背景には、再開発にかかる基地所在自治体の財政負担の重さがあった。この負担を軽減するには国との協働が求められるが、沖縄振興体制が行ってきたような「成長」を優先する再開発ではなく、環境や福祉、文化に軸足を置いた持続可能な社会づくりが求められるだろう。今回の選挙で、環境に関する議論はあまり見られなかったが、ポスト沖縄振興体制の沖縄では環境は地域発展の基軸となるだろう。県民は、持続可能に発展する沖縄をつくることができる候補者を選択できたのか、当選した議員の活動を継続して確認する必要がある。