當眞が角界引退、人生を仕切り直し 白鵬がほれた才能、けがやコロナに泣く


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父親の経営する居酒屋で相撲人生を振り返る角界引退を決めた當眞=10月25日、那覇市曙の「イカリ亭」

 「まわしを巻いても30分立っていられない。潔く身を引く決意をした」。那覇市出身で大相撲の宮城野部屋に所属していた力士・當眞(本名・當眞嗣斗、21)が引退を決めた。小学生時代は「わんぱく横綱」として全国に名をとどろかせた。横綱白鵬(現間垣親方)に見初められ、高校卒業と同時に大相撲の世界へ。しかし、けがやコロナ禍に泣き、わずか2年半で土俵を下りることとなった。「やるだけのことはした。これまで世話になった人たちのためにも、土俵以外の場所でも活躍する姿を見せたい」と、人生の仕切り直しに前を向く。

 那覇市立曙小の入学時に体重はすでに80キロ、身長130センチ。肥満を気にする両親に「相撲をするなら毎日、おなかいっぱい食べてもいい」と言われ、奥武山クラブに入った。巨体を生かした突進力で全国で負けなし。浦添中に進むと、主将として全中で団体優勝を果たした。

 その後、強豪の鳥取城北高校に進学。高校総体で団体優勝するなど、輝かしい実績を残す。高校卒業に合わせ角界入りが決まり、横綱白鵬(現間垣親方)が自ら学校に出向き入門を祝った。新弟子検査至上初の200キロ超の大型新人として大きな期待が寄せられた。

出世披露で横綱白鵬(現間垣親方)の化粧まわしを巻く當眞=2019年3月、大阪場所

 大相撲では順調に勝ち星を重ね、2020年の三月場所で三段目筆頭に。幕下入りまであと一歩のところまで進んだ。しかし、同年5月、糖尿病と診断され1カ月入院。体重は230キロから170キロに減少した。「筋力の低下にショックを受けた。ここでやらなければ、自分はもうだめだ」と退院後は一念発起し、これまで以上に稽古に汗を流した。

 体重180キロ台で体の調子も上がってきた今年2月、椎間板ヘルニアが3カ所見つかった。「常に足がしびれた状態で、雪駄が脱げたまま歩いていても気が付かなかった」。また9月には部屋の関係者に新型コロナウイルスの陽性者が確認され濃厚接触者に。九月場所は休場を余儀なくされた。

 相次ぐけがとコロナ禍で気持ちは切れてしまい、このほど日本相撲協会に引退届を提出し、受理された。11月の九州場所の千秋楽でまげを落とす。元白鵬からは「(辞めた後の)第二の人生の方が長い。頑張れ」とエールをもらった。通算戦績は47勝37敗14休場。最高位は三段目筆頭。

 21歳の若さで新たな道に進む當眞。引退後の当面の目標は、親孝行と車の免許取得だという。「これまで相撲しかしてこなかった。けがの回復を図りながら、自分にできることを見つけていきたい。今の一番の不安は、自動車教習所の車の運転席に体が収まるかだ」と屈託なく笑う。
 (高辻浩之)