オール沖縄の退潮が浮き彫り 組織の立て直し急務に 江上能義・早稲田大、琉球大名誉教授<衆院選2021結果を読む>


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江上能義(早稲田大・琉球大名誉教授)

 今回の選挙で全国的に議席を大幅に減らすという解散当初の予想に反して、自民党の議席はわずかしか減少せず、岸田文雄政権は絶対安定多数を維持した。不人気だった菅義偉前首相を代えて、選挙直前に岸田新首相を誕生させた、いわば変面効果があったのだろうか。

 政権交代を訴え続けた立憲民主党も共産党も議席を減らした。有権者たちは政権交代を望まなかったのである。長いコロナ禍で経済や暮らしが苦境にある現在、政権交代という冒険をせず現状維持の自公政権を選択したといえよう。目立った争点も論争も乏しかった。

 躍進した維新は「身を切る改革」というフレーズでコロナ禍で傷ついた人たちの受け皿になったと、ジャーナリストの畠山理仁さんは指摘している。

 一方、沖縄は辺野古移設建設問題をめぐってオール沖縄と自公政権の対立軸が明確であり、各選挙区でオール沖縄の候補者たちは民意に反する辺野古新基地反対を強く訴え、自公側の候補者たちはコロナ禍で苦境にある沖縄経済の救済に的を絞って、政府の新たな沖縄振興計画をアピールした。

 これまで沖縄の政治は基地反対か経済振興かで揺れ動いてきたのだが、今回は辺野古を擁する3区でオール沖縄の屋良朝博氏を破って元沖縄担当相の島尻安伊子氏が勝利を収めた結果に集約されているように、オール沖縄勢力の退潮と政府の経済振興策の奏功が浮き彫りになった。接戦が予想された4区でも西銘恒三郎氏が現職の沖縄担当相の利点を生かして、最終的に1万5千の票差で逃げ切った。

 だが本紙の最新の世論調査では、辺野古新基地建設について「反対」が56・9%、「容認」が36・8%と、沖縄の世論は依然として「反対」が多数を占めているのも事実である。

 復帰50年を迎える来年の沖縄は、県知事選、那覇市長選、名護市長選をはじめ各種の選挙がめじろ押しだ。玉城デニー知事を先頭とするオール沖縄は抜本的な組織の立て直しと戦略の再検討を迫られよう。

 西銘沖縄担当相には閣僚として、沖縄の経済振興策の力強い実行と共に、沖縄県と日本政府がこれまで対立したまま膠着(こうちゃく)状態にある辺野古新基地問題の現状を打開するべく、側面からの手助けをぜひお願いしたい。多くの県民はそのことを望んでいる。
 (政治学)
 (おわり)