「現代の名工」に南城の福田宗男さん 手書き看板に卓越の技


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福田宗男さん

 厚生労働省は5日、工芸や調理、衣服など各分野で卓越した技能を持つ150人を2021年度の「現代の名工」に選んだと発表した。沖縄県内からは広告美術工の福田宗男さん(69)=南城市=が認定された。県内の「現代の名工」は延べ61人となった。

 表彰式は8日に東京都内のホテルで行われる。1967年度から始まって今回が55回目で、表彰者は本年度を含めて6796人となった。


手書き追求し49年「笑顔になってほしい」
 

 現代の名工に選ばれた福田宗男さん(69)=南城市=は「心つなぐデザイン」をテーマに壁面広告や看板広告などを手掛ける。広告美術工として、この道49年。現代の名工に認定され「栄誉ある賞をいただけてうれしい」と話し「好きで続けてきた。これからも仕事に対する姿勢は変わらない」と前を見据える。

 看板や広告制作のデジタル化が進んでいる中、手書きのデザインに情熱を傾ける。「微妙な色合いや線のゆがみが、(手書きだと)温かい表現につながる」と自信を持っている。

手掛けた看板が並ぶ工房で看板広告のイラストに色付けする福田宗男さん=2日、南城市佐敷の福田工芸

 小学校のころイラストを描くことが好きで、授業中はノートの端に落書きばかりしていた。家庭訪問では先生から「ノートに落書きが多い」と必ず指摘されるほどだった。

 沖縄工業高校のデザインコース卒業後は、木彫り彫刻家のいとこを1年間手伝い、大阪にも渡った。

 転機は沖縄に戻った20歳のころ。那覇市内にあった看板製作会社の前をたまたま通りかかり、掲げられていた看板のカラーリングに雷に打たれるような衝撃を受けた。今思い出しても、当時は見たことのない色合いだった。翌日、履歴書を携え面接を申し込み、入社を決めた。約10年務めた後、別の会社に転職、一貫して看板製作に関わる。

 1984年1月、南城市佐敷に「福田工芸」を立ち上げ独立した。与那原警察署の壁面のイラストを子どもたちと描くなど、地域への協力も惜しまない。

 「自分の看板で笑顔になってほしい」。その思いを胸に、これからも看板製作に向き合っていく。