国連「沖縄に遺骨返還を」 戦前の持ち出し、理事会報告書が総会に


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
昭和初期に人類学者らが遺骨を持ち出した百按司(むむじゃな)墓=今帰仁村

 旧帝国大学の人類学者らが戦前、沖縄などから持ち出した遺骨が返還されていない問題で、国連人権理事会のファビアン・サルビオリ特別報告者が5日までに「植民地主義によって先住民族から略奪された文化遺産の返還は不可欠」とする報告書を国連総会に提出した。大城尚子沖縄国際大非常勤講師らが、この問題について特別報告者に情報提供していた。

 松島泰勝龍谷大教授によると、提出されたのは「植民地主義の下で行われた人権侵害、国際人道法違反について、正義のための暫定的な方法に関する報告書」。過去に植民地統治下で行われた人権侵害や、現在も植民地状態に置かれた地域の事例について、市民団体などから寄せられた情報を元にサルビオリ氏がまとめた。専門家会議などでの議論を経て、国連事務局が10月に国連総会に提出した。

 報告書は沖縄の風葬墓などから研究目的で持ち出され、国立大学の博物館などに保管されている遺骨について「先住民族の略奪された文化遺産などの返還は不可欠で、未解決な要素だ」と指摘した。

 欧州各国で遺骨を先住民族に返還する事例が相次いでいることを挙げ、「先住民族の権利に関する国連宣言」で定められた返還の義務を「促進するよう努力しなければならない」と提言している。

 松島教授は「今後、国連の人権に関する専門機関などで今回の報告書を元に議論される可能性がある」としている。