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日本のトップを急追 主将の重責、力に変え 女子円盤投げ・城間歩和<ブレークスルー>


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 陸上円盤投げで日本一を目指す沖縄市出身の城間歩和(21)=沖縄東中―中部商高―九州共立大3年=が、着実に力を伸ばしている。今月23日に行われた記録会でそれまでの自己ベストを1メートル以上更新する50メートル68を投げ、目標の県記録まであと17センチに迫った。トップ選手とも戦える50メートルの壁をついに突破し、「1回超えてしまうと、もっといけると思える」と自信を増した。今月から名門九共大の女子主将も務め「競技者としてだけでなく、人間的にも後輩が付いていきたいと思える人になりたい」と重責を力に変える。

日本選手権決勝で堂々とした投てきを見せる城間歩和=6月、大阪市のヤンマースタジアム長居

■コンプレックス

 中学で既に身長が170センチあったという恵まれた体格を武器に、高校2年の全国総体で当時の自己ベスト45メートル91を投げて2位。大学でも、体重を増やし体の使い方を磨いて年々記録を伸ばしてきたが、コンプレックスがあった。更新する大会は学内での記録会ばかり。「全国では全然投げられない試合が多かった」と緊張感の中で結果を出せず、自信が付いてこなかった。

 転機は今年6月の日本学生個人選手権。監督には普段から「もっと自分の力を信じていい」と諭され、競争の中でも自身の投てきに集中することを意識して臨んだ。結果はそれまでのベストを1メートル以上更新する49メートル59で準優勝。さらに同月の日本選手権でも49メートル34の好記録で6位入賞を果たした。心の成長が結果として表れ、「今季はちゃんと自分の投げができて、トップ選手とも戦えている」と自信をつけた。

■チーム力の再興

 今月に4年生が引退し、実績を加味して陸上競技部の女子主将に指名された。監督からは「競技者としてより強くなるためには、周りを引っ張れるようにならないといけない」と人間力の向上を促された。男女合わせて100人以上が在籍する九州の名門をまとめる役割を担い「先輩のトップ選手には、周りが見えている方が多い。主将になったからにはしっかりやりたい」と奮い立つ。

 陸上は個人競技だが、チーム要素も強い。自身の経験を重ね「仲間と高め合い、応援してくれる環境があれば結果も違ってくる」と実感する。しかし昨年から新型コロナウイルス禍で個別練習が増え、大会での応援も制限が課されている。後輩には選手と応援する側の一体感を大事にする九共大のカラーが浸透していない。「向かうべき方向性をそろえ、チームとして全国で戦いたい」と団結力を高める決意だ。

■技術面の追求

大学生活の最終シーズンに向け、新主将として心身の成長を見据える城間歩和=21日、福岡県北九州市の九州共立大

 精神面だけでなく、技術面も突き詰めてきた。遠心力を増すために「できるだけ体より遠くで円盤を回す」ことを意識する。あえて回転の「入り」と「振り切り」の時の動き、指先の感覚のみに重点ポイントを絞り、力みの少ないフォームを追求してきた。23日の記録会で50メートル68を投げた際を「やろうとしてきたことがしっかりできた」と淡々と振り返る。心身の着実な成長が成果として表れ、驚きはないようだ。

 県記録の50メートル85は目前に迫るが、その先にも視線を向ける。「中学からまだ日本一を達成できていないので、来年はつかみたい」と力を込める。今年の日本選手権の優勝記録は52メートル89、日本学生対抗選手権は54メートル18で、いずれも中学の頃から背中を追ってきた同級生の齋藤真希(東京女子体育大)が頂点に立った。普段から59メートル03の日本記録を持つ先輩の郡菜々佳(九共大大学院)と練習を共にし、「来年は2人と同じラインで戦えるようになりたい」と奮起する。上り調子の勢いそのままに、日本のトップ戦線に割って入る決意だ。

 (長嶺真輝)