沖縄の金融トップが対談 事業承継へ連携を強化 M&Aの事例報告


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トップ対談を終えて記念撮影に応じる(右から)金城馨氏、新城一史氏、山城正保氏、川上康氏、松川吉雄氏、城間徹二氏、村松清孝氏ら=9日午後、那覇市のロワジールホテル那覇

 国や沖縄県などが設定した「事業承継啓発月間」に合わせ、沖縄県内金融機関や関係団体のトップらが一堂に会した対談イベントが9日、ロワジールホテル那覇で開かれた。取引先の親族承継や合併・買収(M&A)を仲介し、地域に根を張る老舗企業の存続や雇用の維持につなげた具体的な事例をトップ自らが報告。全国的に見ても後継者の不在率が高い沖縄の現状に触れながら、各機関が支援の取り組みや連携を強化する必要性を確認し合った。

 沖縄銀行の山城正保頭取は、持続可能な地域社会を実現するために、県内事業者の後継者不足が深刻な問題になっていると指摘する。那覇市の日本そば店の第三者承継を仲介した際には専門機関と連携して円滑な移行ができたとし、「親しまれた味と技術を残し、取引先を守ることができた。承継先も事業が拡大し、相乗効果を上げた」と地域金融機関が事業承継を支援する意義を語った。

 コザ信用金庫の金城馨理事長も、中部地区のトラック運送業者が息子に事業承継した事例として、県よろず支援拠点と事業者をつなぐ伴走型支援に取り組んだことを紹介。「営業店では事業者が本音でいつでも相談できる環境をつくり、本部では豊富な情報を駆使し外部と事業者をつなぐ力が重要だ」と態勢づくりの考え方を説明した。

 琉球銀行の川上康頭取は、ロゴマークにある「なが~いおつきあい」が事業承継を取り組む際の重要なキーワードだと主張。あるグループ企業の経営者が子どもに事業承継した例では、ガバナンス(企業統治)確立や業務効率化のため、持ち株会社化に移行させ、行員を出向させ経営安定化に努めた。「コンサルティング業務は今後の銀行の新ビジネス。しっかり展開したい」と述べた。

 沖縄海邦銀行の新城一史頭取は「お客さまのお役にたてる一番身近な銀行」をキーワードに掲げ、事業者の御用聞きとして、機動力を生かした訪問活動で信頼関係の構築に取り組んでいることを報告した。海銀が仲介した国頭村安田のホテルのM&Aでは、訪問活動でつかんだ情報がマッチングにつながったとし、「日頃の活動が成功につながった」と話した。

 このほか、沖縄振興開発金融公庫の城間徹二理事、沖縄税理士会の松川吉雄会長、中小基盤整備機構の村松清孝副理事長も参加した。対談の模様は後日、ユーチューブの中小機構公式チャンネルで配信する。