【記者解説】沖縄全域が訓練場に…自衛隊の民間港使用の背景とは 台湾有事想定も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
自衛隊統合演習(実動演習)で海上自衛隊輸送艦への搭載を待つ陸上自衛隊車両=2011年11月10日、広島県の海上自衛隊呉基地(防衛省統合幕僚監部HPより)

 防衛省統合幕僚監部は今月下旬に実施する自衛隊統合演習で、初めて県内の民間港を使用する。防衛省は防衛白書で同演習の目的を「有事の際に防衛力を最も効果的に発揮する」と位置付ける。米中対立による台湾有事への懸念もある中、近接する沖縄の民間地で陸・海・空自が「実戦」を想定した統合訓練を繰り広げる。

 安保関連法は集団的自衛権行使を容認し、「重要影響事態」と認定すれば米軍の後方支援が可能となる。演習で予定される民間港の使用、民間船を借り上げた人員や物資輸送などは、台湾有事を見据え、米軍の後方支援を意識した可能性も浮かび上がる。

 ただ、沖縄での訓練実施は米中関係に刺激を与えかねず、沖縄や自衛隊が他国の攻撃対象とみなされる危険性もはらむ。陸自部隊の配備に賛否が分かれる石垣市へ艦船を寄港させる予定だが、10日時点で市や統幕から住民への説明はない。演習開始日が今月下旬に迫る中、住民感情への配慮は著しく欠けていると言わざるを得ない。

 県内では米軍と自衛隊の「一体化」が進み、日米共同訓練が頻繁に実施されてきた。関係者によると、今回の演習で自衛隊は米軍基地や訓練施設の一部も使用する方向で調整を進めているという。今回の演習のように、訓練目的で自衛隊による米軍基地の使用が進むと、沖縄全域が日米の訓練場と化していく懸念も一層高まる。

 (池田哲平)