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Bリーグ1部主将経験者・狩俣昌也がB3新規参入の長崎ヴェルカに移籍した理由<ブレークスルー>


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味方のスクリーンを使ってインサイドに切り込む狩俣昌也=10月23日、長崎県の大村市体育文化センター(長嶺真輝撮影)

 今季、バスケットボールBリーグ3部(B3)に新規参入した長崎ヴェルカに、宮古島市出身の狩俣昌也(33)=興南高―国際武道大出=が加入した。昨季まで1部(B1)のチームで主将を務めるなど第一線で活躍してきた。移籍を決断した最大の理由は、参入初年度から層の厚いスタッフや練習環境を整えた長崎の「本気度」だった。チームは現在、開幕10連勝でリーグ首位を独走中。最短2シーズンでのB1昇格を掲げる新鋭クラブを初代主将の1人としてけん引している。

■闘争心を評価

 旧bjリーグ時代に琉球ゴールデンキングスで優勝を経験し、2016年のBリーグ発足後はB1の三河、滋賀で主将を務めた。ポイントガード(PG)として類いまれなリーダーシップを備える狩俣に、長崎から初めて声が掛かったのは今年2~3月のこと。「何が何でも負けたくないという彼の闘争心が、一から立ち上げるチームには必要だと思った」(伊藤拓摩ヘッドコーチ)という熱烈なオファーだった。

 ただ、B3は「一度も見たことがなかった」という。当然トップリーグのB1に比べてレベルは落ちる。一方で一からのチームづくりや昇格という新たな挑戦ができる。「ある日、『よし、長崎に行こう』と決めても、翌朝には『いや、違うかもしれない』と考え直す。また寝て起きたら『やっぱり行こう』と思う」。もんもんとした日々が続いた。

 そんな中、スポーツによる地域創生を掲げる球団は初シーズンに向けて着々と準備を進めていた。5月に練習拠点のクラブハウスを完成させ、B1で活躍してきた野口大介やジェフ・ギブスら名選手を獲得。選手と契約する前から既に経験豊富なスタッフ陣もそろえ「地域に対して、どうなっていきたいかというビジョンや、いかに強い組織をつくっていくかという部分で本気度が伝わった」と移籍を決断した。

■リーダーの自覚

試合中、味方に指示を出す狩俣昌也(左)

 プロ10年目。豊富な経験を買われ、主将3人のうちの一人に抜てきされた。若手も多い中で、プレー中の状況判断やコーチが求めていること、練習に取り組む姿勢などを自らの経験も踏まえながら伝える。「ミスの責任は自分が取るくらいの気持ちで、彼らが伸び伸びとプレーできるような声掛けをしている」と目配りを忘れない。

 持ち味である、1対1の激しい守備も健在だ。先頭で守るPGとして「自分がアグレッシブに行けば、背中を見て他の選手の気持ちも上がる。チームにエネルギーを与えたい」と力を込める。攻撃面では「自分でスコアをするのが大前提」としながらも、試合中は頻繁にHCとコミュニケーションを取り、各選手に指示を出して共通認識の向上を図る。「自分に得点、アシストが付かなくても、チームとして狙い通りのオフェンスをすることが大事」と司令塔としての自覚は強い。

 12日現在、平均23分出場し、スタッツは8・7得点、4・2アシスト。伊藤HCは「アシストのアシストや、気の利いたプレーコールなど、スタッツ以上の存在感がある選手」と、狩俣のリーダーシップに厚い信頼を寄せる。

 今季の目標はB3を制してのB2昇格。「滋賀にいた頃から最後のチームになるかもしれないと思ってプレーしている」と語るベテランは、その先にあるB1昇格を見据えた上で「そのためにできたチーム。責任を持ってやらないといけない」と強い決意を語った。

 (長嶺真輝)