キングス攻撃に幅、地区首位走る けが人続出で不安要素も シーズン序盤を振り返る


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豪快なダンクで会場を沸かすアレン・ダーラム=10月27日、沖縄市の沖縄アリーナ(高辻浩之撮影)

 プロバスケットボールBリーグ1部の2021―22シーズンが序盤戦を終えた。インサイドを中心に大型補強を決行し、攻撃の幅やリバウンド力が増した琉球ゴールデンキングスは11勝3敗で地区首位に立つ。チーム文化とも言えるハードワークは健在で、平均失点74・3はリーグで4番目に少ない。“第2次桶谷キングス”にとっては順調な船出と言えそうだ。今後の不安要素はけが人の多さ。リーグが再開する12月に向け、コンディションを整えて中盤戦に臨むことも重要だ。 (長嶺真輝)

■手札の多さ

 「手札が多いのはやりやすい。何かを出し続ければおのずといい流れがくる」。A東京との開幕2連戦を連勝で終えた10月2日、9年ぶりにキングスの指揮官に復帰した桶谷大HCはチームの特徴をこう表現した。新生キングスを象徴する戦術が、ビッグラインナップだ。

 インサイドで体を張れるアレン・ダーラムに加え、日本国籍取得選手の小寺ハミルトンゲイリーを獲得し、小寺が他の外国籍選手2人とコートに立つ「3ビッグ」が“手札”に加わった。現在の平均リバウンド39.9はリーグ1位。開幕直後こそ攻撃がインサイドに偏る傾向が見られたが、岸本隆一が「そこだけに頼っちゃだめ」(9月30日)と危機感を示していた通り、岸本、田代直希、今村佳太らガード、フォワード陣も3点弾やドライブで存在感を強めていった。

 ドウェイン・エバンスとダーラムの「走れるビッグマン」が2人そろったことで、機動力も増した。如実に表れたのが10月15日の川崎戦。リーグ屈指の高さを誇る相手に対して攻守の切り替えを早くして速攻を連発し、105点を奪って圧勝した。

 試合後、ダーラムは「スピードで優位に立てると思った。このチームはタレントがそろっていて、危険な存在になれる」と述べ、戦い方の幅広さに対する自信をうかがわせた。

■田代離脱に奮起

 次戦は12月1日にある天皇杯の秋田戦。けが人が続出しているキングスにとっては貴重な休息期間となる。桶谷HCが「まずはコンディションを整えることが重要」(11月13日)と語るように、リーグ再開後に大黒柱のジャック・クーリーや小野寺祥太の早期復帰が期待される。

 一方、今月6日の新潟戦で全治10カ月の大けがを負った田代主将は今季中の復帰が厳しくなった。チームの身上であるハードワークを体現し、先頭で引っ張っていただけに、岸本は「田代のけがはチームにとって大きな出来事」(11月13日)と見る。ただ「皆が必要な時に声を掛け合い、危機感を持って取り組んでいる」とも。翌14日の試合後、今村もファンの前で「けがをしたキャプテンのためにも、全員でシーズンを走り抜きたい」と語り、奮起を誓った。

■新興勢力

 シーズンの全60試合中14試合を消化し、西地区では新興勢力の台頭が目立つ。高い得点力を備える安藤誓哉と金丸晃輔がコンビを組んだ2位島根(昨季5位)はリーグ2位の平均得点を誇る。3位信州(同7位)は平均失点がリーグで3番目に少なく、昨季最下位の6位広島も大型補強に成功し、白星先行を続ける。

 序盤の最終戦となった11月14日の群馬戦後、桶谷HCは「西は昨季以上に強豪がそろい、一節一節で順位が変わる状況。どこが優勝してもおかしくない」と分析し、気を引き締めた。