【深掘り】政権代わっても冷遇…玉城知事、岸田首相と「グループ会談」 辺野古反対も言えず


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 関係者によると、玉城知事は、次年度以降の新たな沖縄振興策について訴えたが、「辺野古新基地建設反対」を打ち出す県の立場を示すことはできなかった。政府与党からは、沖縄選挙区で前回から1議席上積みした衆院選の結果を受けて、攻勢を強める動きもみられる。

記者団に答えず

 「知事、知事!」

 18日午後4時前、首相官邸。岸田首相との初会談を終えた玉城知事は、追いすがる記者団に背を向けて足早に出口に向かった。準備された会見台には目もくれず、記者団からの問いかけに「沖縄振興、税制要望などについてお願いさせていただいた」とだけ語った。記者団から「辺野古については」と問われると表情は厳しさを増した。

 今回は沖縄振興予算や、税制の確保に向けた定例の要請で、基地問題と切り離すために辺野古に言及しなかったとみられる。会談には、桑江朝千夫沖縄市長、宮里哲座間味村長も同席しており、「2人への気遣いもあり辺野古への言及は控えた」(県政関係者)との見方もある。

 ただ、ようやく首相と対面で話す機会を得たにもかかわらず、「一丁目一番地」(県関係者)の辺野古新基地建設反対を伝えられなかったことで、県政与党から不満の声も上がる。

 ある政府関係者は冷ややかな視線を送る。「官邸とのパイプがあるのと、ないのとで対応が違ってくるのは当たり前だ。(宜野湾)市長に先を越されるということは、それだけ関係が薄いということだ」

政府与党の攻勢

 与党側には、県知事選や県内自治体の選挙が相次ぐ来年の「選挙イヤー」を意識した動きも顕在化している。

 自民党の茂木敏充幹事長は、党の機関誌で前回から1議席上積みした衆院選の結果について「勢いが出てきた」とし、「各級選挙で勝利が得られるように全力で取り組む」と述べた。

 一方、辺野古新基地を巡り、玉城県政は、地盤改良工事に向けた設計変更について、審査を進める。すでに申請を受けてから1年半が経過し、不承認とする方針を固めているものの、まだ正式に表明していない。

 玉城県政は不承認の判断の前に、政府と対話のテーブルを模索する。不承認を判断する時期について、県幹部は「(現状で首相は対話に応じないと)玉城知事が見切りを付けた時だ」と語る。玉城知事が不承認のカードを切る時期が、今後の焦点となる。
 (安里洋輔、明真南斗)