【名護】沖縄工業高等専門学校(名護市)の情報工学コース専攻科1年生の4人がこのほど、県産のパイナップルを扱う沖縄フルーツランド(名護市、安里博樹社長)が9年前に開発した、絵本の中に入り込んで施設を体験できるテーマパーク式ゲーム「トロピカル王国物語」の再構築に成功した。(松堂秀樹)
更新されたテーマパークは12月にも“開園”される。安里社長は「パソコンの基本ソフト(OS)の変更などで継続利用ができない恐れがあった。全国的にも同じような課題を抱えている企業は多く、今回の取り組みは産学協力のモデルになる」と話した。
「トロピカル王国物語」の更新に成功したのは比嘉雄亮さん(20)=浦添市出身、社領(しゃりょう)一樹さん(20)=石垣市出身、小室凜央さん(21)=那覇市出身、真嘉比浩乃さん(20)=読谷村出身=の4人。
安里社長が1年ほど前に、IT技術を通して地域と学校をつないでいる名護市のひろたけSolutionの釣健孝(つりたけよし)取締役に相談を持ち掛けたところ、沖縄高専の技術指導員として関わっていた釣氏から比嘉さんらを紹介された。
4人は與那嶺尚弘教授の指導の下、週2回のプログラミングの授業で、コンピューターソフト「Adobe Flash Player」(以下、フラッシュ)を利用している現行のゲームのプログラミングを分析。フラッシュは外部からの侵入に脆弱(ぜいじゃく)性があることなどから、2020年12月にサポートが終了していた。そのため、比嘉さんらは現在のトロピカル王国物語のプログラミングの移し替えや再設定などに着手。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校中も進捗(しんちょく)状況を報告し合うなどして完成を目指してきた。
学生らは計5回、安里社長と打ち合わせを行った。当初はミニゲームに変更することも検討したが、1年中は実らない地元のパイナップルを観光客らに知ってもらおうと、社員らが創意工夫を凝らして開発したという誕生秘話を聞き、オリジナルの物語を再現することに決めた。映像と音声の分離や、バナナを投げる際の回転数の計算など、作業は膨大で多岐にわたった。
コロナ対策として手を使わないでいいよう、足元の三つのペダルで操作できるようにしたほか、「安価でメンテナンスしやすいシステムにしてほしい」との安里社長の要望に応えた。民間のIT企業に同様の作業を依頼すれば数百万~1千万円程度かかるという。
名護市内で11日、取材に応じた比嘉さんは「習った技術を実際にどう生かすか学べた。なかなか経験できないことができるのが高専の魅力だ」、社領さんは「初めて重大な責任が伴うプロジェクトだった」、小室さんは「難題にぶつかっても4人で集まって解決した」、真嘉比さんは「チームプレーでできた作品だ」と、それぞれ充実した表情を見せた。