【深掘り】北谷町長選、オール沖縄の渡久地氏勝利 保守層、無党派層つかんだ要因とは


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当選判明後、バンザイで喜びを表現する渡久地政志氏(右から3番目)や支持者ら=21日、北谷町桑江の選挙事務所

 【北谷】任期満了に伴う北谷町長選が21日投開票され、無所属新人の前町議3人による選挙戦は、渡久地政志氏(42)が5713票を獲得し、初当選を果たした。阿波根弘氏(63)の3609票、仲栄真恵美子氏(69)の2050票の合計を超える票を集め、過半数を得る結果となった。関係者への取材を基に、渡久地氏勝利の背景に迫った。

 4期16年の野国昌春町政の継承と発展を訴える渡久地氏は、立民や共産の推薦を受け革新系候補として出馬。町政刷新を掲げる阿波根氏は自民と公明の推薦を受け、保守系候補として名乗りを挙げた。

 そこに待ったを掛けたのがもう一人の革新系候補、仲栄真氏だった。所属会派「北谷ニライの風」が、町立博物館建設事業などで野国町長を支える町政与党と意見が対立。「真の革新町政実現」を打ち出し、仲栄真氏擁立に動いた。革新から2人出馬する事態が起きたことで、渡久地氏と仲栄真氏の間で革新票が割れる可能性が出てきた。

 10月31日の衆院選。沖縄2区では、北谷町で社民の新垣邦男氏が約6千票、自民の宮崎政久氏が約4200票を取った。

 渡久地陣営は、町長選でも同程度の保守票と革新票を予想。しかし革新系から2人出馬したため、革新票が仲栄真氏に流れれば、阿波根氏との接戦が十分考えられ、厳しい戦いを強いられると危機感を強めた。

 陣営は政策の浸透を図るため、野国町長も同席し町内の全11区を回り、住民と対話を重ねた。ビラやパンフレットを活用し、同級生や先輩・後輩ら総勢30~40人の協力も得て支持拡大を図った。陣営の一人は「結束力がかなり強かった。活動量も圧倒的だった」と語る。

 PTA会長や消防団副団長を務めるなど、積極的に地域に関わってきた渡久地氏の活動も、無党派層とされる子育て・働き盛り世代の支持へと広がった。それに加え、野国町政を評価する票も積み上げた。

 迎えた21日の投開票。午後10時半前、「渡久地氏当選確実」の一報が選挙事務所に届くと、支援者から一斉に歓声が上がった。

 渡久地氏は過半数の票を獲得した。ある町議は、渡久地氏が阿波根氏の保守票を切り崩したとみる。「衆院選の宮崎氏の約4200票を、阿波根氏が取ってもおかしくなかった」。阿波根陣営の一人は、総括はこれからと前置きしつつ「(選挙の運動の)出遅れた影響がないとはいえない。その間に事業者などへ先手を打たれた」と語った。

 渡久地氏は当選から一夜明けた22日、こう述べた。「保守中道も含めた本来のオール沖縄の形が取れた選挙だった」
 (砂川博範)