平飼いの産卵鶏、イチゴ栽培 「農福」連携で運営 沖縄・中城村の「ともや農場」


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障がい者の働く場を確保する「農福」連携プロジェクトに取り組む具志堅真社長(右端)、引率の星野利久部長(左端)とこの日の作業に参加した通所者=10月30日、中城村北上原のともや農場の鶏舎

 【中城】国内では珍しい産卵鶏の平飼いやイチゴの観光農園など多角的経営を進めている中城村北上原のともや農場(具志堅真社長)が、農業と福祉施設をつなぐ、いわゆる「農福」連携プロジェクトに取り組んでいる。

 農福プロジェクトは那覇市松川の就労継続支援B型事業所を運営する合同会社「すまいる」(神谷直樹社長)との連携。両社の縁が重なり合って「すまいる」の通所者をともや農場が受け入れたのが2019年。

 ちょうどその頃、具志堅さんは同村出身の妻の実家が経営する事業を引き継ぐため一大決心し、20年務めた業界キャリアに終止符を打ち沖縄に移住した。

 しかし厳しい経営状況が続き、一時は養鶏業を諦めることも考えたが「福祉施設通所者の仕事の場を何とか守りたいとの思いも事業を継続させる大きな動機になった」と振り返る。

 「すまいる」の職員の引率で週5回、通所者3~4人がともや農場を訪れる。障がいがある通所者の体調に配慮し、午前10時半から休憩時間を挟んで午後2時まで鶏卵の回収や餌やり、鶏舎の清掃、草刈り、イチゴ栽培ハウスなどの軽作業を中心に行っている。

 引率の星野利久部長は「通所者は農場に行くことをとても楽しみにしている。作業の段取りを覚えて責任感が芽生え、表情が生き生きとしている」と受け入れに感謝し、社会との接点につながっていると成果を強調した。

 農業に全く無縁だった具志堅社長にとっても事業の立て直しは苦労の連続だった。その中で農福連携の社会的意義に強い思いを抱く。「障がい者でも無理のない範囲で作業ができれば体調の鍛錬と安らぎや喜びになり、生きがいにつながるのではないか。農業の分野でそのお役に立ちたい」と力を込めた。

 今後、ともや農場では受け入れ人数を含め、「すまいる」社と「農福」プロジェクトの効果的な進め方や将来像を追究していくことにしており、その広がりにも期待している。
 (岸本健通信員)