沖縄かまぼこが苦境 すり身や揚げ油…製造コスト上昇が圧迫 業者「限界」と値上げも


社会
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揚げたてのたらし揚げをパッケージに詰める従業員ら=26日、那覇市曙のマーミヤかまぼこ那覇工場

 沖縄の食卓に欠かせないかまぼこの原材料となる魚のすり身や食用油が軒並み高騰している。包装材料費や物流費、人件費の上昇も追い打ちを掛け、県内のかまぼこ製造業者は苦境にあえいでいる。経費を抑えるため原材料を安価なものに切り替えたり、業務の効率化を図ったりと企業努力を重ねるが、「自助努力によるコスト圧縮は既に限界だ」と悲鳴を上げる。一部業者は商品の値上げに踏み切り、消費者に理解を求めている。

 日本かまぼこ協会によると、魚肉ねり製品の主原料は冷凍すり身で、その大部分を輸入に頼っている。

 最大の供給源である米国産スケトウダラのすり身は、今年3月に輸入平均単価が前月比20%増の1キロ当たり365円に跳ね上がり、その後7カ月連続で前年を上回る高値となっている。

 欧米を中心にカニ風味かまぼこなどの人気が高まり、世界的なすり身の需要増が続いているためだ。世界的な需要に供給が見合わず、原料輸入に頼る国内のメーカーは高値での調達を余儀なくされている。

 沖縄ならではの課題もある。食用油の相次ぐ値上げだ。県内の16社が加盟する県蒲鉾(かまぼこ)水産加工協同組合の金城太参事は「沖縄のかまぼこはほとんどが油で揚げるため、食用油の価格高騰も製造業者を苦しめている」と指摘する。

 新型コロナウイルス禍からの景気回復が続く中国で食用油需要が伸び、米国などでは環境負荷が少ないバイオ燃料の利用が拡大。食用油の原料となる大豆や菜種などの市況が昨年秋ごろから上昇し、日本の食用油製造大手も主力商品の価格を上げている。

 西南門小(にしへーじょうぐゎー)カマボコ屋(糸満市、玉城理社長)は今月1日から、ほぼ全商品の販売価格を10円値上げした。玉城社長は、原材料のすり身や食用油に加え、現下の原油価格の高騰で包装資材や配送費も軒並み値上がりしていると説明し、「約3年ぶりの値上げは苦肉の策だが、従業員を守るためにも必要な措置だった」と理解を求めた。

 マーミヤかまぼこ(石垣市、金城有作社長)も年内は価格を据え置くが、来年1月から一部商品を5~10%値上げする方針だ。

 金城社長によると原材料を安価なものに切り替えるだけでなく、すり身にチーズやニンニクを加えた新商品「マーミヤ餃子」を開発するなど、新たな客層を獲得するための企業努力を重ねてきた。だが、製造コストは跳ね上がる一方で、「(値上げは)不可抗力だ」と肩を落とす。

 金城社長は「かまぼこは食事にもおつまみにも、お歳暮などの贈り物にも喜ばれる。県民には食べて、贈って応援してもらいたい」と呼び掛けた。

(当銘千絵)