「琉球文学大系」全35巻が全国へ 名桜大とゆまに書房が連携 「世界に残る名著に」


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「琉球文学大系」第1巻、第2巻の製本サンプル「束見本」を手にする(左から)ゆまに書房の荒井秀夫会長、名桜大学の高良文雄理事長、砂川昌範学長=26日、名護市の名桜大学

 名桜大学(名護市)が2019年から編集刊行に取り組んでいる「琉球文学大系」(全35巻)が、全国で販売されることが決まった。琉球文学を「文学」「歴史」「民俗・地誌」の3領域で整理し、作品に注釈や解説を付けたテキスト。学術資料の出版などを手掛ける「ゆまに書房」(東京)が出版・販売を担い、国内外の研究者や全国の図書館にも普及を図る。研究者だけでなく、一般の人にも分かりやすい形式で琉球文学を体系的にまとめる同書を全国で入手できる環境が整う。同大学などによると同様の試みは初めて。

 名桜大学の高良文雄理事長、砂川昌範学長とゆまに書房の荒井秀夫会長らが26日、同大学で記者会見し発表した。12年間の計画で「産学連携長期プロジェクト事業」として取り組む。同事業の調印式も行われ、高良理事長と荒井会長が契約書を交わした。

 第1巻「おもろさうし・上」は2022年3月に700部を刊行する。さらに第14巻「組踊・上」は22年9月、第11巻「琉歌・上」は22年12月、第2巻「おもろさうし・下」は23年3月にそれぞれ刊行する予定で進めている。

「琉球文学大系」の第1巻「おもろさうし 上」の見本

 ゆまに書房は国内外の研究者へ学術書を販売しており、「琉球文学大系」も全国各地や海外のアジア関連の研究者らへの売り込みも視野に販路を確保する構え。

 荒井会長は「琉球文学を世界へ広げるきっかけになると思う。それほど世界に残る名著になると確信している。出版史上でも大切な取り組み。本来なら国がやるべきことで、大役だ」と意義を強調した。

 波照間永吉編集刊行委員長は「(今回のような)一つの体系を持った本を編んだ作業はこれまでなかった。歴史に残る編さん事業と位置付けて取り組んでいる。50年後、100年後も輝きを発し続けるだろう」と思いを込めた。