「中立的立場」は加害者寄り 子どもへの暴力防止で研修 おきなわCAPセンター


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子どもへの暴力や防止法などを説明するおきなわCAPセンターの奥間智香枝事務局長(前方左)ら=24日、那覇市の沖縄セルラースタジアム那覇会議室

 子どもへの暴力が後を絶たない中、子どもの命と権利を守るためにできることを考える機会にしようと、県は24日、本年度の子ども虐待防止推進事業として「子どもを暴力から守るために CAP(子どもへの暴力防止)ワークショップ」を那覇市の沖縄セルラースタジアム那覇会議室で開いた。おきなわCAPセンターの奥間智香枝事務局長、高久みさ子さん、井形陽子さんが講師を務め、市内の子ども支援に携わる関係者ら約20人が参加した。

 CAPは「Child Assault Prevention」(子どもへの暴力防止)の頭文字で、子どもが暴力から自分を守るための教育プログラム。同センターは1996年に発足し、小学校を中心に県内各地の学校や児童養護施設、教育関係団体などでワークショップや研修会を実施している。

 24日のワークショップは、暴力とは何かを考えることから始まった。参加者からは、いじめや虐待、体罰、仲間はずれなどさまざまな声が上がった。その上で同センターの奥間事務局長は「どの暴力にも共通するのは、人の心と体を傷つけるということ。力を持つ者から力を持たされていない者へ向かう」と説明した。

 さらに、子どもは社会的な力を持たされておらず、暴力に関する知識がないことで被害に遭いやすいことを指摘。「~してはいけない」など行動を制限・禁止していた従来の暴力防止法は「被害者が自分を責めることにつながりやすく、沈黙することになる。そのような悪循環を断ち切る必要がある」と話した。CAPで伝える防止法を挙げ「~してもいい」と行動の選択肢を広げ、子どもたちが自ら相談しやすい環境を整える重要性を説明した。

 その後、同センターが県内学校で実施するプログラムを紹介。講師3人が劇方式のロールプレイを交えながら「安心・自信・自由」の子どもたちの三つの権利について考えた。同センターによると、虐待された子どもが大人へ成長し、自らが虐待する側となった割合は33%、虐待をしない割合は67%だという。奥間事務局長は「早い時期にその子の苦悩を受け止めて寄り添ってくれる大人がいたかいないかがその分岐点となる。子どもの周りにいる大人の誰もが、この地点に立てる」と強調した。

 子どもからのSOSへの対応として(1)子どもの気持ちに注目して話に耳を傾ける(2)問題解決のため何ができるか子どもと一緒に考える(3)子どもを裏切らない(4)児童相談所や市町村役場など公的機関への相談―を挙げた。奥間事務局長は「どんな理由であれ被害者側の絶対的な味方になることが大切。暴力被害において中立的な立場は実は加害者寄りということを心にとどめてほしい。どんなことがあっても暴力を受けていい人はいない」と語った。