パスが合うのはなぜ?「あうんの呼吸」脳科学で解明へ FC琉球とOISTが共同研究 Jリーグで初


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「同期性」を科学で解明し選手の能力向上を目指した研究の連携について覚書を交わした小川淳史社長(右から2人目)とギル・グラノットマイヤー副学長(同3人目)=10日、恩納村の沖縄科学技術大学院大学学園(提供)

 サッカーJ2のFC琉球を運営する琉球フットボールクラブと沖縄科学技術大学院大学学園(OIST)は10日、「あうんの呼吸」に例示されるような選手同士の連係力を高める方法について科学的に解明するプロジェクトを立ち上げると発表した。パスのタイミングがかみ合うなどの「同期性」や「一致性」に着目し、脳科学からアプローチするという。既にチームの協力を得てデータの収集などを開始。同期性を数値化する計測法を確立して、トレーニングなど実践への応用を目指す。同期性をテーマにした研究はJリーグで初めてとしている。

 同クラブの小川淳史社長とギル・グラノットマイヤー副学長が同日、恩納村のOISTで会見し、研究の連携で覚書を交わした。期間は1年間だが、OISTは研究に3年は必要と見ている。

 研究はトム・フロース准教授が率いる身体性認知科学のチームが担う。同期性についてフロース准教授ららは「脳や体の活動のリズムは複雑だが、これが複数の人の間で同時に一致するということ」と説明した。

 小川社長はパスを事例に出す側と受ける側のタイミングや動作の一致を同期性と捉え「分かりやすいのはセットプレーの質の向上だと思っている。コーナーキックの時にどう動くか。より効果的なセットプレーを生み出せるかもしれない。さらに連係やあうんの呼吸とは何なのかが解明されれば、少ない時間でより効果的な連係を生み出せる練習メニューを組めるかもしれない」と期待を込めた。

 来季から本格的にデータ蓄積を計画。選手を研究室に招き脳活動の記録や、フィールドでの心拍測定などモバイルを使ったデータ収集を続け、同期性について数学的手法を用いて数値化することを目指す。計測法を確立し、連係力の向上を意味する計測値を上昇させるトレーニング法の考案や、チームメンバーの呼吸や動きのタイミングの一致度、その一致度がどうチームワークに影響するのかなどを探っていくという。

 グラノットマイヤー副学長は「この研究がきっかけとなって他にも広がることを期待している。サッカーを科学的にどう進化させるのか楽しみにしている」と成功を祈った。