居酒屋勤務から最年少の市議に 立候補のきっかけはコロナ下の行政 平田健人さん<壁をこえて 糸満市議選から>1


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
「平成生まれの唯一の市議として、(市や市議会の動きが)いろんな世代に届くようにしたい。それが僕の務めだと思う」と話す平田健人さん=11月22日、糸満市内

 1972年の復帰以降、糸満市議会で最年少の25歳の議員が誕生した。11月に投開票があった市議選で当選したのは平田健人さん。若さと行動力を強みに「後輩の声をくまなくキャッチし、先輩からアドバイスを聞いて、地域活性化のため走り抜けたい」と意気込む。

 立候補する前は、居酒屋で働いていた。2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大で店は休業した。休業要請の解除後、市は経済活性化のため、プレミアム商品券事業を開始。常連客や店のSNS発信を見て訪れる客が増え、行政施策の大切さを目に見える形で実感した。

 10、20年後の市の活性化を見据え「なれるなら今すぐに」と、被選挙権を獲得した今年、出馬を決意した。

 市議会議員を意識したのは中学、高校時代の生徒会活動だった。会長を務め、人前に立ち仲間と学校行事を盛り上げるのが好きだった。「生徒会長も周りあってこそのリーダー」。どうしたら訴えが伝わるか、どう動くのがベストかを考えていた。

 当時の先生から「将来、市議会議員になってみない?」と言われた。その一言がきっかけで「いずれは市議に」と思いを温めていた。

 父が元市議の副後援会長をしていたこともあり、市議は近い存在だった。一方、選挙活動では肌感覚で4割の同世代が選挙に無関心だと感じた。「現役議員と年の差があり、地域や世代の声が街づくりに生かされているという実感がない」。要因の一つをこう指摘する。

 後援会には中高の同級生を中心にメンバーが集まった。同級生やそこから広がる同世代の輪に向けて、発信を続けた。まずは選挙に興味を持ってもらおうと、SNSでは年代ごとに政策をアピールする動画を発信。初めて選挙に行く有権者に向けて投票の仕方も投稿した。告示後の総決起大会には20代を中心に約100人が集まり、若い世代の間で支持を固めた。

 「選挙では各候補者の人間性や経験、政策とその実現性を見てほしい」と平田さん。SNSで市議会の情報を発信している市議は少ない。今後は有権者が市議の活動を知り、街づくりに参加しやすくなるよう、政策の進捗(しんちょく)状況や市の事業、予算の使い方を分かりやすくSNSで発信していく。市民との情報共有を密にし、市を活性化させたいと考えている。
 (比嘉璃子)


 来年は統一地方選がある。本連載では11月の糸満市議選を例に、多様な社会を議会に反映させるため、育児や仕事を抱える若者や女性が出馬しやすい環境について考える。