空手・喜友名、圧巻演武で10連覇「気持ち込めた」 歴史に名を刻む 全日本選手権


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前人未到の10連覇を達成した喜友名諒のアーナン=12日、東京都の日本武道館(大城直也撮影)

 空手の天皇杯・皇后杯第49回全日本選手権最終日は12日、東京の日本武道館で行われ、男子個人形の喜友名諒(興南高―沖縄国際大出、劉衛流龍鳳会)が10連覇を果たした。金城新(美来工科高―沖縄国際大出、劉衛流龍鳳会)は予選ラウンドで敗退。定期的に沖縄で喜友名らと稽古を共にする女子個人形の岩本衣美里(クリーンコーポレーション)は3位決定戦で敗れ、4位だった。

 決勝の演武。「アーナン!」。10連覇に王手をかけた喜友名諒が畳の中央へ歩を進め、気合十分に叫んだ。師事する佐久本嗣男氏ら先人たちが世界を制してきた劉衛流を象徴する形。「気持ちを込めて打った」

 体の正面で両拳を内側に握り、深く吸った息を一気に吐き出して集中力を高める。一転、素早い足さばきから掌底突きを連発。360度から観客の視線を一身に受けながら、重厚感に満ちた技を繰り出していく。決めどころで気合を発するたび、圧巻の演武に会場から盛大な拍手が降り注いだ。

 優勝を決め、大一番の名残を含んだ厳しい表情のまま畳を降りると、客席を見上げてきょろきょろし始めた。長男の冴空ちゃんと妻の絵理さんを視界に捉えると、強烈な目力がふっと溶け、左手を振りながら別人のように優しく笑った。

 無観客だった東京五輪を念頭に「家族も含め、支えてくれた多くの方に形を見せることができてよかった」とうれしそうに振り返った。今年は東京五輪で初代金メダリストとなり、世界選手権では師の佐久本氏を超える前人未到の4連覇を達成。「少しは自分の名前を歴史に刻めたかな」と謙虚に誇った。1週間後には飛躍の年を締めくくるアジア選手権が控える。3連覇の懸かっていた世界選手権の団体形で出場権を逃し、悔しい思いをした。「個人形、団体形で圧倒的に勝ちたい」と言い切った。
 (長嶺真輝)