【記者解説】沖縄予算、一括交付金を「狙い撃ち」 国の関与強める狙いも


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財務省

 財務省が来年度の沖縄関係予算について2403億円とする当初額を示した。内閣府が概算要求の段階で2998億円を求めていたことから3千億円台割れは予想されていたものの、減額幅の大きさは衝撃だ。

 関係者によると、与党内では、2022年4月からの当初予算に、1~3月の補正予算を含めた「15カ月予算」で3千億円台を確保する議論があった。一方で、復帰の1972年から50年にわたって続いた沖縄振興で、課題とされてきた「県民所得の向上」や「産業振興」に改善の傾向が見られない点や、国の財務逼迫(ひっぱく)などを背景として、「沖縄振興の在り方を見直すべきだ」とする声も少なくなかった。

 このため、3千億円をわずかに割り込んだ概算要求額を「基準」とし、15カ月予算でその額に近づけることを一つのめどとしていたとされる。

 ただ、財務省が示した当初額では、補正予算218億円を合算しても2621億円で、概算額にも遠く及ばない。さらに県や市町村が増額を求めた一括交付金に減額が集中した点には、国の関与を強めようとする政府の狙いも透けるだけに、県内からの反発は必至だ。

 西銘恒三郎沖縄担当相は22日の財務省との大臣折衝で増額を求める姿勢を示しているが、一括交付金が“狙い撃ち”された背景には、財務省に県側の計画立案の甘さを見透かされた面もある。

 ある自民党議員は、財務省から複数の事業で使途の有効性への指摘があったとし、「つかみ金という意識になっていないか。県側にも事業を厳しく精査する目が必要だ」と指摘した。増額交渉に臨む西銘氏には、そうした財務省からの圧力をはね返すだけの理論武装も求められる。結果次第では県出身大臣としての評価が左右されるのは避けられない。
 (安里洋輔)