湾岸戦争時「在沖米軍出動」を日米発表から削除 日本側要求、国会での追及懸念 外交文書公開


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 1991年の湾岸戦争時に在沖米軍基地から8千人が中東へ派遣されたことを巡り、米国政府が日本側の貢献として日米外相会談の共同発表文に盛り込もうとしたのに対し、日本側が懸念を示して削除させていたことが分かった。22日に公開された外交文書に含まれていた電信の内容から読み取れる。

 当時、その時点で沖縄からの部隊出動は既に報じられ、日米安全保障条約の表記や憲法との整合性が問題となっていた。琉球大の山本章子准教授(国際政治史)は「『在日米軍は極東で行動する』という日米安全保障条約と中東派遣との矛盾を、言葉尻の調整で目をそらそうとしていたことが分かる史料だ」と指摘した。

 中山太郎外相は91年1月、訪米してベーカー国務長官と会談した。湾岸戦争に協調して対処する旨などを盛り込んだ「共同新聞発表」を出したが、日米は発表内容を調整していた。今回公開の外交文書に含まれていた電信の内容によると、中山氏は米側との文言調整に当たる在米大使館に宛てて、在日米軍の出動を盛り込まないよう伝えた。

 米側は当初、湾岸戦争に関する日本側の貢献として、資金提供に加え、在日米軍基地からの出動を発表文に入れようとしていた。中山氏はこのような文言が盛り込まれると、国会などで「無用の議論」を引き起こすとの懸念を記した。議論となれば、今後の支援が難しくなるとの見通しを示した。

 その結果、共同新聞発表では、日本側の支援措置として資金拠出が強調されたものの、在沖米軍の出動は盛り込まれなかった。
 (明真南斗)