【識者談話】「在外米軍出動」削除 日米安保の矛盾ごまかし(山本章子・琉大准教授)


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山本章子氏(琉球大准教授)

 日米安全保障条約6条で米軍は「極東」の範囲内で行動することになっている。フィリピン以北で、日本周辺、韓国、台湾などが想定される。中東は明らかに「極東」の範囲を超えている。湾岸戦争前後は、日米安保の矛盾がすごく分かりやすく出ていた時期だ。

 在沖米軍の中東派遣について、米国は純粋な好意で共同新聞発表に入れようとしたのだろう。だが、日本政府としては堂々と声明に盛り込む訳にはいかないと考えた。国会などで「安保条約違反だ」と追及されることになる。そのため、できる限り表沙汰にしないよう、発表の文言を調整していた。

 一方で県民は米軍基地の動き方や運用の激しさ、警戒度合いなどから中東への出動を肌で感じていた。だからこそ、1990年11月の知事選では、湾岸危機への日本政府の姿勢や冷戦後の在沖米軍基地の在り方が争点となって大田昌秀氏が勝利した。県内での動きと比べ、東京とワシントンが小手先の文言調整でごまかそうとした姿勢が際立つ。
 (国際政治史)