保全と利用、両立への模索続く 沖縄・奄美が世界自然遺産登録<沖縄この1年2021>


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くす玉を割って世界自然遺産登録を喜ぶ地域住民ら=7月26日、国頭村辺土名(大城直也撮影)

 登録延期やコロナ禍などが重なった沖縄・奄美の世界自然遺産登録が7月26日、18年越しで決まった。沖縄・鹿児島両県や国などの関係者らは各地をインターネットでつないで視聴会を開き、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会の決定の瞬間を見守り、喜びを分かち合った。

 登録された沖縄島北部、西表島、奄美大島、徳之島には世界的にも希少な亜熱帯の森が広がる。亜熱帯は乾燥した地域が多く、湿潤な森が存在すること自体が珍しい。

 それぞれの島には、かつて大陸とつながっていた時代からいる生き物が海に隔てられて島になった後も生き残り、独自の進化を遂げた。トゲネズミ属は大陸にいた仲間は絶滅し、世界中で沖縄島と奄美大島、徳之島にだけ生き残り、各島でオキナワトゲネズミ、アマミトゲネズミ、トクノシマトゲネズミとなった。

 この豊かな生物多様性が認められ遺産登録が実現した。今後は増加が予想される観光客にも対応しながら、保全を進める必要がある。世界遺産委員会は登録に際して、観光管理や交通事故対策など四つの課題を指摘した。各地域では対策を進め、モニタリングなどの計画に基づいて自然の状態を評価して、2022年末までに世界遺産センターに報告する。

 登録各地では自然の保全と利用の両立へ、活動が活発化する。国頭村教委は子どもたちが地元の自然を学ぶカリキュラムを村内の小中学校で試行し始めた。動植物への関心も高まり、ヤンバルクイナのリハビリ施設建設に向けたクラウドファンディングには、目標の1千万円を超える寄付が集まった。西表島では12月21日に「西表財団」が設立された。竹富町は広く寄付金を募って島の自然や文化を守り、持続可能な発展を目指すための取り組みを進める。

 先人たちが守り伝えてきた自然を次世代に継承しながら、持続可能な地域をどう育てるか、登録を「てこ」にした地域づくりが進んでいる。
 (黒田華まとめ)