【記者解説】沖縄振興策「国主導」色濃く 県要望に冷淡、「二重基準」も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 日本復帰50年の節目を迎える2022年度の沖縄関係予算には、振興策の主導権を県から国に移そうとする政府の意向が色濃く反映された。象徴的なのは、21年度当初予算からの大幅減額となった沖縄振興一括交付金の扱いだ。

 県は総額3千億円台の維持と共に、使途の自由度の高い一括交付金の増額を強く求めてきたが、政府は県が求める1千億円台の維持はおろか、大幅な削減に踏み切った。国直轄の「沖縄振興特定事業推進費」が前年度比5億円減にとどまったのとは扱いの差が歴然だ。

 政府側は「施策の有効性」などを削減の理由に挙げるが、県側は「執行率は年度ごとに上昇しており、施策の効果は出ている」と強調する。

 振興策の一環である来年度の沖縄関係税制を見ても、政府の冷淡さと「二重基準」は際立つ。税制13項目のうち、進出企業が少ない「経済金融活性化特別地区」など、「施策の有効性」が問われる事業が複数ある。政府は県に対して有効性を求める一方、国の取り組みの検証はなおざりにしている。この扱いの差について、政府は説得力ある理由を挙げていない。

 政府は21年度末で期限を迎える沖縄振興特別措置法に替わる新法の適用期限を従来通り10年間延長する方針も固めた。

 同時に、新法の法付則に「5年以内の見直し」を明記する方向性も示した。法制化によって、見直しは事実上義務化される可能性が高くなり、政府が振興策の策定に関与する度合いはさらに強まるのは必至だ。

 予算編成を巡る一連の政府与党の動きは、米軍基地問題で対立する県への露骨な揺さぶりと捉えられても仕方がない。「沖縄の自立的発展」をうたう沖縄振興の理念は急速に形骸化している。

 (安里洋輔)