糸満市が虐待防止条例 19年女児死亡受け来年度施行 県内初、情報共有強化へ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
「市子どもを虐待から守る条例」を全会一致で可決した糸満市議会=24日

 【糸満】糸満市議会は24日の12月定例会最終本会議で市提出の「市子どもを虐待から守る条例」を全会一致で可決した。児童虐待防止条例の制定は県内市町村では初めて。28日に公布し、来年度に施行する。市や保護者、学校や病院など関係機関の責務を明示し、情報共有を強化することで児童虐待の未然防止と早期発見につなげる。

 糸満市から千葉県に転居した小学生女児が2019年に虐待死する事件があり、制定を目指してきた。条例は市が把握した虐待に関する情報を他自治体を含めて共有することを可能にした。

 保護者の責務に関する条文で「子どもが苦痛を受けているかを問わず、体罰を加える行為その他の心身の苦痛を与える行為」を禁止する。

 パブリックコメントを基に、妊婦が安心して生活できるようパートナーに配慮を求める項目を加えた。
 市は、虐待を受けた子どもの安全確保と生命を守ることを最優先事項と規定。市長が子どもの保護が必要と認めた場合、子どもと保護者の氏名、住所、心身の状況について関係機関に提供する。転出先の自治体に引き継ぐこともできる。

 市は来年1月に相談システムを導入し、親や子どもらからの相談内容、担当者の対応などを一元的に把握。部局間の情報共有を円滑にし、支援の強化を図る。将来的には市内全16の小中学校にも導入する予定。
 虐待行為を潜在化させる恐れがあるとして、罰則規定は設けていない。

 条例は児童相談所の虐待対応ダイヤル「189(いち早く)」に合わせ、毎月18、19日を児童虐待防止推進の日と制定。来年度は市内500世帯に意識調査をし、結果を基に体罰としつけの違いや子どもの意見表明権についても啓発していく。

 2017年、市は小学生の娘に対する父親の虐待を疑わせるような情報を得たが、転居先の千葉県野田市に伝えていなかった。女児は19年に虐待死した。

 當銘真栄市長は21日の市議会で「二度とこのようなことが起こらないように、条例を制定して子どもたちを虐待から守っていきたい」と、浦崎暁氏の一般質問に答えていた。

(比嘉璃子)