補正込みでも概算額遠く「政争の具」県幹部怒り(上)<ひずむ沖縄振興 復帰50年の岐路>


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閣議後会見で2022年度の沖縄関係予算を発表する西銘恒三郎沖縄担当相=24日、東京

 政府は24日の閣議で、2022年度の沖縄関係予算を2684億円と決定した。一般会計の総額は過去最大を更新したものの、沖縄関係予算は前年度比326億円の大幅減となった。日本復帰から50年の節目を迎える22年度から沖縄振興の新たな体制がスタートするが、基地問題で県と政府の溝が深まる中で、振興を巡る議論も不穏な空気が漂う。予算決定の舞台裏や減額の影響に迫る。

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 「どんなことでも起こり得る。上積み額に上限はない」

 沖縄政策の議論に関わるある自民党議員はつぶやいた。22日午前に西銘恒三郎沖縄担当相と鈴木俊一財務相との間で行われる大臣折衝を前に、「本年度(2021年)の補正予算と合わせて、2998億円に近づけられれば御の字だ」と見通しを語った。

 内閣府が概算要求で求めたのは2998億円。これに対し財務省は「2403億円」の当初額を示し、西銘氏は「非常に厳しい」との認識を示していた。ただ、政府が22年度予算の前倒しとして位置付ける21年度補正予算で、沖縄関係は218億円を計上していた。補正を含めた来年1月から23年3月の「15カ月予算」で概算額を確保するという“落としどころ”のシナリオが、自民党では支配的だった。

 米軍普天間飛行場の移設問題で対立する玉城デニー知事に「手柄はやれない」(別の議員)という一方で、露骨な予算減は、県選出大臣である西銘氏の立場も危うくしかねないという事情があった。難航が予想される財務省との交渉にも、前出議員は「(最終的には)最低でも2700億円。2800億円台に届くこともあるだろう」と楽観視していた。

 しかし、大臣折衝での上積みは281億円にとどまり、15カ月予算でも概算額に届かなかった。前出の議員は「正直言って期待外れの数字だ」とため息をついた。

 政府の予算編成が佳境を迎える中で、自民党の沖縄政策を主導する沖縄振興調査会(小渕優子会長)は、現行の沖縄振興特別措置法(沖振法)に代わる改正法について、10年ごとで刻んできた延長幅の見直し議論を浮上させた。

 唐突感が否めなかったが、調査会が8月に公表した新たな沖縄振興に向けた提言の策定経緯に伏線があった。草稿段階では新たな沖縄振興計画の期間を「10年」としていたが、最終稿で記述が削除されていた。

 県側が沖縄関係予算の「3千億円台の確保」など振興策の「現状維持」を漫然と求めることに、党内に不満の声が募っていたためで、小渕氏も繰り返し「単純延長はない」と牽制(けんせい)していた。とはいえ、玉城知事のみならず、身内の自民党県連からも要望が出ていた「10年延長」は既定路線とみられていた。

 それだけに期間の「5年短縮」が急浮上した衝撃は大きかった。

 結局、5年以内の見直し規定を法律に盛り込んだ上で「10年延長」が決まったが、政府と自民党が決定を公表したのは、22年度予算案を閣議決定した24日のことだった。

 ある県幹部は「一連の動きに政治的なものを感じる」と疑念を向ける。基地問題で政府と対立した大田昌秀氏が倒れた1998年の県知事選に重ね、「沖縄振興が政争の具にされている」と怒りをにじませた。

(安里洋輔)