【識者談話】階段1つのビル、避難対策の課題とは? 稲垣暁さん(防災士・社会福祉士)


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 「特定一階段等防火対象物」のように、階段が一つしかないのは非常に危険な状態だ。火災で階段が使えなくなった場合、被害が大きくなる可能性がある。建物内の階段以外の避難路を確保するなどのハード面と、建物の所有者が中心となって自営消防団をつくるなどのソフト面での対策を早急に考えないといけない。

 各消防への調べで、一つしか階段がない建物が約150棟とあったが、実際はもっと多いはずだ。所有者が消防本部に届け出ていないことも十分に考えられる。

 火災発生時の避難は、片方の避難経路がふさがれても、もう一方が選択できる「2方向避難」が大切になってくる。階段が一つしかなくても、バルコニーに避難用のはしごを設置するなどの対応が求められる。

 大阪市北区の火災では、犠牲者の多くが一酸化炭素中毒で亡くなった。煙を防ぐために、建物内の防火シャッターの点検、新設が必要になってくる。

 寒冷地ではストーブが要因で一酸化炭素中毒が発生する場合があるが、沖縄はストーブになじみがない分、認識が比較的低い。一酸化炭素中毒の危険性を理解した上で、避難設備などについて考えることが重要になってくる。

 県内の建築物の特徴として、台風による飛来物対策で窓に柵が設置されていることが多く、避難を阻害する可能性がある。最近では、内側から柵を取り外せるものもある。今回の火災を、身の回りの防災を見直す機会にしてほしい。

 (談)