「本当に無くしたいんだな」一括交付金の大幅減に県衝撃 配分割合が新たな火種に<ひずむ沖縄振興 復帰50年の岐路>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「これまでの公務員生活でこんなにガクッと落ちたのは初めて見た」。ある県幹部は驚きを隠せない。

 西銘恒三郎沖縄担当相は22日、2022年度沖縄関係予算案が前年度比約330億円減の約2680億円となる方針を示した。この10年間で初めての大幅減。県が使途を決められる一括交付金の減少幅は大きく、同219億円減の762億円となった。

 県の22年度当初予算編成が大詰めを迎えるさなか、県庁の財政部局に衝撃が走った。ある幹部は「こんな額になるとは予見できていない」と漏らした。全庁で予算配分と事業の優先順位を見直す動きが一気に広がった。

 土木建築部によると、当初見込んでいたハード交付金が減ったことで、公共工事の工期が延びる恐れもあるという。幹部の1人は、予算減で「公共工事のために地権者が土地の売却を申し出てくれても、今後は断らざるを得ないかもしれない」と危機感を募らせる。

 前年度比で過去最大の一括交付金の減額があったのは翁長雄志県政時の17年度当初予算で、16年度比255億円減の1358億円だった。22年度は過去2番目の落ち幅となる。ただ17年度から減少傾向が続く中でのさらなる減額で、県と市町村に与えた衝撃はかつてなく大きい。

 ソフト交付金は県を通じて市町村に配分する仕組みで、県と市町村は協議の上、5対3の配分割合としてきた。

 だが西銘氏は、22年度の一括交付金は県と市町村それぞれ381億円と、1対1の配分割合を想定した上で大臣折衝に臨み、上積み額を含めて762億円を獲得したと説明した。「配分割合は大臣が決めるものではないが、県と市町村で話し合ってほしい」と、玉城デニー知事に求めたという。

 県市長会の桑江朝千夫会長(沖縄市長)と県町村会の宮里哲会長(座間味村長)は政府の22年度予算案の閣議決定翌日の25日、西銘氏と面談した。ソフト交付金の配分割合について、桑江氏は「西銘氏の市町村に寄せた考え方を基本として当然、県と市町村1対1の配分割合を求めていきたい」と強調した。宮里氏は「がむしゃらに1対1と言うわけではないが、それなりの額を県に求めたい」と述べた。

 県は市町村の意向を聞きつつ、来年1月末ごろに開く沖縄振興会議で配分割合を決定する。ただ一括交付金の大幅減と配分割合は県と市町村の分断を生み、新たな火種になりかねない。県幹部は「大変厳しい議論になるのではないか」と憂慮する。

 ここ数年、政府裁量の強い北部振興事業費や沖縄離島活性化推進事業、沖縄振興特定事業推進費などは予算の拡充・維持傾向が続く。

 ある県幹部は「政府は、県の裁量が強い一括交付金を本当に無くしたいんだろうな」と述べ、深いため息をついた。
 (梅田正覚)