予算「一括計上方式」でいいのか…与野党や識者ら疑問視<ひずむ沖縄振興 復帰50年の岐路>(下)


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西銘恒三郎沖縄担当相(左)に沖縄振興などの要望書を手渡す玉城デニー知事=10月、県庁

 2022年度の沖縄関係予算の減額が既定路線となっていた今月7日。県議会11月定例会一般質問で自民党県連政調会長の座波一氏は、名護市辺野古の新基地建設を巡る県と政府の対立を背景に、予算額が変動する現状を憂慮する主張を展開した。

 「県の政策企画力が低いから、政治的対立で評価される。予算は予算だとしっかり対応できるシステムがあれば、政治的に対立しても予算を要求できるはずだ。それがないから政治的対立が前面に出る」

 座波氏は県の企画立案力や予算折衝能力が低いのは沖縄の日本復帰以来、内閣府による予算の一括計上方式に頼り切ってきたためだと主張。「復帰50年を節目に、将来の沖縄振興の在り方を考えないといけない時期に入っている」と述べた。

 1972年に米国施政下から日本へ復帰した沖縄県は、他県のように各省庁と予算折衝をするノウハウがなかったため、沖縄開発庁(現内閣府)が各省庁との間に入って折衝を肩代わりして計上する方式を取った。

 他県と違い、一括計上方式で総額が提示されることで、基地問題を巡る動向と予算の増減額が関連付けて捉えられやすく、常に政治的色彩を帯びてきた。予算をテコに事実上の「基地と振興のリンク」の手法を取っているとして、玉城デニー知事を支える県政与党や識者からは一括計上方式の見直しを求める声が上がっている。

 また、復帰時から続く沖縄振興(開発)特別措置法では「沖縄の自主性を尊重」と明記するが、復帰50年を経て当初の理念は失われつつあるとの見方が支配的だ。

 長年、県の企画政策業務に関わる一般社団法人ニュー・パブリック・ワークス(東京)の上妻毅代表理事は、沖縄振興への政治介入を阻むためには、県が一括計上方式をやめる検討を始めることを提唱する。

 上妻氏は「一連の推移を見ていると、県は詳細に分析をして一括計上方式が必要との結論に至ったわけではなく、制度の現状維持が目的化しているように映る。政府が新法を『5年で見直す』と言っているので、そのタイミングまでに検証して『一括計上をやめたい』と申し出るのも手だ」と指摘する。

 玉城知事からの諮問を受け、22年度からの新たな沖縄振興計画素案を議論する県振興審議会の会合が27日、那覇市で開かれた。委員からは政治的な事情に左右される予算について「増減に一喜一憂することなく施策を展開したい」などの意見が相次いだ。

 委員の一人、島袋伊津子沖縄国際大教授は「そもそも振興予算の根拠について世代交代が進んでいて共通認識が不安定だ。歴史的経緯による課題は抜本的に解決していないことを、これからは今以上に発信していかないといけない」と指摘した。

 (梅田正覚)