東京五輪・パラの光と影 県勢で初の金、コロナ禍強行や巨費投入 <沖縄この1年2021>


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男子形予選 喜友名諒の演武=日本武道館

 新型コロナウイルスの影響で五輪史上初めて1年延期された東京五輪・パラリンピックが7~9月、開催された。県勢は五輪8競技に10人が出場し、今大会で初めて正式種目となった空手の男子形で喜友名諒が県勢初の五輪金メダルを獲得。2人が代表入りしたパラリンピックでは車いす陸上の上与那原寛和が銅二つを手にし、沖縄スポーツ界に新たな足跡を刻んだ。

 優勝を決めた喜友名が畳中央で四方に座礼をし、礼節を重んじる姿は沖縄発祥である空手の精神を世界に示した。金獲得を約束後、他界した母の遺影を手に表彰台の中央に立つ姿は、多くの人の胸を震わせた。

 平良海馬が代表に名を連ねた野球の侍ジャパンが頂点に立ち、レスリンググレコローマンスタイル77キロ級の屋比久翔平は一度も勝ったことのなかったイラン選手を3位決定戦で圧倒し、銅メダリストとなった。県勢のメダルはこれまで1992年バルセロナ五輪体操団体で知念孝が獲得した銅のみだったが、今大会で計三つをつかんだ。

 他方、悔しい結果も。沖縄の“お家芸”である重量挙げでは、男子61キロ級の糸数陽一が3位と2キロ差で2大会連続の4位となり「悔しいの一言」と肩を落とした。進退も考えたが、周囲の励ましもあり3年後のパリ大会を目指すことを公言した。73キロ級の宮本昌典も7位でメダルに届かず、涙を流しながら「次はメダルをかけて戻ってきます」と雪辱を誓った。

 アスリートが躍動した一方で、大会は一部を除き無観客という異例の形態となった。コロナ禍での開催は開幕前から賛否両論が巻き起こった。批判が噴出する中での強行は社会に分断を生んだ。さらに東京五輪・パラリンピック組織委の森喜朗元会長による女性蔑視発言や式典演出を巡る不祥事など問題が相次いだ。

 開催経費についても組織委が今月、1兆4530億円になる見通しと発表し、巨費投入の効果は今も検証の必要に迫られている。未曽有の五輪は肥大化した世界最大のスポーツの祭典の光と影を浮き彫りにした。

(敬称略)
(謝花史哲、長嶺真輝)
(おわり)