【詳報】辺野古移設の考えは?玉城県政への評価は?<名護市長選立候補予定者座談会1>


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(左)渡具知武豊氏 (右)岸本洋平氏

 【名護】2022年1月16日告示、同23日投開票の名護市長選に向けて、琉球新報社が26日夜に開いた立候補予定者座談会では、立候補を表明している現職の渡具知武豊氏(60)=自民、公明推薦=と新人の岸本洋平氏(49)=共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦=が選挙戦に向け政策を訴えた。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設問題について両氏のスタンスの違いが改めて浮き彫りになった。目指すまちづくりや新型コロナウイルス対策などを巡りそれぞれの考えを力強く訴え、論戦を展開した。座談会での発言を紹介する。(文中敬称略)(’22名護市長選取材班)

 


辺野古移設

完成見通せず中止を 岸本氏
国と県の係争を注視 渡具知氏

―米軍普天間飛行場の辺野古移設の是非について聞かせてほしい。

 岸本 渡具知氏は「推移を見守る」と態度表明を避け続けている。無責任だ。名護市では県民投票で7割以上が埋め立て反対の民意を示した。また辺野古の大浦湾で最深90メートルまで続く軟弱地盤が見つかったが、国の地盤改良工事は70メートルまでしか示されておらず完成見通しが立っていない。このような工事に県試算で約2・5兆円とされる税金が使われてはならない。宜野湾市では米軍機から落下物が相次ぎ、小学校にシェルターが設置されている。事件事故が相次ぐ普天間は即時に閉鎖・返還し、辺野古新基地は中止すべきだ。

 渡具知 辺野古移設については国と県との係争が続いており、その決着を見るまではこれを見守る他ないとの立場に変わりなく、是非に言及する立場にない。市議に当選して以来、市の課題に常に向き合ってきた。その中には移設問題もあり、その変遷の中で市民の複雑な感情や立場などを見てきた。前市政までの長い期間にわたり市民は対立を強いられてきた。基地問題だけが市の問題であるかのような閉そく感をもたらす市政運営は二度とあってはならない。私は市民に対立ではなく融和と発展をもたらしたい。


再編交付金

頼らずとも前進可能 岸本氏
生活向上に財源活用 渡具知氏

―在日米軍の再編交付金の是非と活用は。

 渡具知 1期目の選挙戦より、いかなる予算も活用して市民生活の向上、そして地域の発展に努めていくと申し上げてきた。現在も市民の生活を良くするために、あらゆる財源を活用する考えに変わりはない。防衛省の判断により交付されている再編交付金については、他の補助金や交付金と同様に、今後も市民生活のために活用していきたいと考えている。

 岸本 再編交付金があろうとなかろうと市民にとって最適なまちづくりを行う。名護市は合併から51年経つが、再編交付金があった期間はわずか数年だ。稲嶺前市政の2期8年では再編交付金に頼らずとも校舎の建て替えや教室へのクーラー設置などしっかりと教育環境の整備が行われた。再編交付金がなくても名護市はしっかりと前に進むことができる。


県政評価

民意大切、冷静対応 岸本氏
予算減額、影響危惧 渡具知氏

―玉城デニー県政への評価は。

 渡具知 来年度の沖縄振興予算が厳しい金額となり、市民生活に影響が出ないか危惧している。県と国との対話がしっかりとなされていないことの表れで、沖縄の発展のためにあってはならない。そのような県政運営は評価できない。

 岸本 「誰一人取り残さない」を掲げ民意を大切にする県政運営を行ってきた。大変評価している。豚熱や新型コロナウイルス感染症対策など予想しなかった事案にも冷静に対応した。重症化を抑えるため医療機関と連携してきた。


クロス討論

岸本氏「絶えない米軍問題、市民の暮らしは」 → 司法判断見守る 渡具知氏
渡具知氏「子育て支援の財源、削減事業は」 → 基金創設し捻出 岸本氏

 岸本 安部のオスプレイ墜落に対する市議会の意見書について渡具知氏は当時反対討論している。認識は変わらないか。

 渡具知 当時のオスプレイ墜落には大変強い憤りを感じたことを覚えている。しかし、当時のオスプレイ墜落に対する抗議決議と意見書には、墜落の抗議とは関係のない趣旨の文言もあったため、結果として意見書には反対の立場で討論したと記憶している。

 渡具知 子育て支援無償化は無駄を省くことで継続可能と明言している。削減する事業を市民に明確に示すべきだ。

 岸本 子ども太陽基金を創設し、基金からの捻出を考えている。現在は国と県が負担している事業で、(市が)無償化しているのは保護者の負担部分だ。本年度予算には予備費が1億円も計上されている。1億円も必要なのかというところもある。ふるさと納税を増やすなどの手だても十分ある。市一般会計予算430億円の中で十分、無償化は可能だ。

 岸本 米軍の事件事故が絶えない中で「見守る」だけでは市民の暮らしは守れない。それについてはいかがか。

 渡具知 玉城デニー知事も県議会で(名護市辺野古の新基地建設について)「判決が出れば司法の判断に従う」と述べている。議会において同様な発言をしている。司法の場において最終的な決着を見るまでは、これを見守るほかないとの立場だ。

 渡具知 辺野古の工事を、どのような権限で止めるのか具体的に示してほしい。司法の決定には従うのか。

 岸本 県民投票では市でも7割以上が反対の民意を示した。政府は民意をしっかり受け止めなければならない。11月に玉城知事が(沖縄防衛局の設計変更申請を)不承認にし、論理的で科学的な根拠に基づいた理由を説明した。問題を全国の人に知ってもらい、日本全体で考える必要がある。それが基地を止めることにつながる。市長権限も行使していく。


<出席者>

 渡具知武豊氏(60)=無所属現職、自民、公明推薦
 岸本洋平氏(49)=無所属新人、共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦
 司会 松堂秀樹(琉球新報社北部報道グループ長)


渡具知武豊氏

 とぐち・たけとよ 1961年8月12日生まれ。市許田出身。第一経済大(現・日本経済大)卒。市議5期を経て、2018年から現職。

岸本洋平氏

 きしもと・ようへい 1972年12月19日生まれ。市宇茂佐出身。早稲田大大学院修了。2006年に市議初当選し現在4期目。