辺野古移設問題、渡具知氏は係争注視の姿勢、岸本氏は世論喚起で阻止<争点を洗う・名護市長選>上


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名護市役所

 2022年1月23日投開票の名護市長選は、米軍普天間飛行場移設に伴う辺野古移設問題が最大の争点となる。2期目を目指す現職の渡具知武豊氏(60)=自民、公明推薦=は移設への是非を示していないが、新人の岸本洋平氏(49)=共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ=は移設反対の立場を取っており、スタンスは分かれる。

 18年2月の市長選では政府の全面支援を受けた渡具知氏が、移設に反対する現職候補に勝利。同年12月に政府は辺野古沿岸部への土砂投入を始めた。移設阻止を掲げる玉城デニー知事は21年11月、辺野古埋め立てに係る沖縄防衛局の設計変更申請を不承認とした。それに対して防衛局が審査請求で不承認の取り消しを求めるなど、移設問題を巡る県と政府の攻防は継続している。

 渡具知氏は移設問題について、辺野古を巡る県と政府の係争が続いているとして「係争が決着を見るまでは、これを見守るより他ない」と述べるにとどめ、従来同様に「推移を見守る」との立場を維持する。

 岸本氏は自然環境を破壊するなどとして移設反対を表明。軟弱地盤の存在などから実現可能性に疑問符を付け、「先が見通せない工事にこれ以上税金が使われてはならない」と世論喚起で移設阻止を図る構えだ。

 一方、渡具知市政の発足後、政府は名護市に対し、基地政策への協力に応じて自治体に支給する「米軍再編交付金」の支給を再開した。現在は年間約15億円が交付されており、渡具知氏は同交付金を財源に、選挙公約であった子ども医療費や給食費、保育料の無償化などを展開している。

 再編交付金は自治体にとって使い勝手が良い財源である一方で、基地受け入れの見返りとして交付を受けることへの批判もある。移設計画の進ちょくに伴い交付金は減額していき、いずれは終了する時期も来る。再編交付金を巡る渡具知、岸本両氏の姿勢の違いも、市民の主要な判断材料の一つとなる。

 渡具知氏は再編交付金について、「市民の生活を良くするためにあらゆる財源を活用する考えに変わりはない」とし、住民サービスの無償化事業などに積極的に活用する立場を示す。一方で「有限であることは理解している。期限までに国などと交渉を重ね、財源確保に努める」とする。

 岸本氏は「交付金があったのは数年だが、これまでも経済活性化などは問題なく図られてきた」とし、再編交付金に頼らない市政運営を掲げる。「(未交付だった)前市政では予算を約100億円も増やし、子育て環境は県内トップクラスとなった」と住民サービスの継続は可能とする。
 (’22名護市長選取材班)


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